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大分県の某所、人里離れた山奥に、九州最恐のパワースポットと呼ばれる洞窟がある。その名も「白鹿権現(ししごんげん)」。 「禁断の洞窟」、「骸骨洞窟」とも呼ばれる同地は、古来より山の神を祀る女人禁制の聖域であった。 一説にその起源は、平安時代末期の久安2年(1146)に、奇妙な光を放つこの洞窟に辿り着いた猟師の兄弟が、白鹿の姿に化身した神のお告げにより祠を築いたのが始まりだという。 現在でも熊野神社として、猟師が毎年狩りの収穫と安全を祈願する為に、洞窟に猪の骨などを奉納しに訪れる信仰が続いている。
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2014年10月11日午前7時、合流地点の大分県別府駅前。
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昨晩に前乗りして安宿で一泊しつつ、温泉にも一切浸からずまたもやって来たぜ九州! |
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また変な像がある駅前ですなあ。 「ピカピカのおじさん」って書いてありますが・・・。 |
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閣下、お久しぶりです。 と言っても前回は3年ぶり、今回は数ヶ月ぶりですけどね。 |
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おお、ケツフェチ眼鏡じゃねーか。達者に暮らしていたか? |
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閣下、いい加減わざと名前間違えるの止めてください。 |
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ケツフェチのおじさん、あ、いや、逆本さん。お久しぶりです。 |
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合流を果たした我々は、しばらくローカル線の列車に揺られ、白鹿権現を目指す拠点となる山麓の田舎町に降り立った。
さて、この辺で、あらかじめ我々の置かれた状況を説明しておこう。
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実はこの撮影当時、超大型台風19号ヴォンフォン(画像はNASAによる衛星写真)が、
じりじりと日本列島に接近中という状況であった。
これまでの旅でも、台風や大雪などの悪天候にことごとく邪魔され続けてきた我々だが、
今回は滞在地に直撃するといったこれまでに無いパターンでもあり、
過去最大最悪の条件と言って過言ではない。
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しかも、我々の予定している旅のルートは、事もあろうに、この迫り来る超大型台風に挑んでいくかのように、
大分から宮城の海沿いを南下していくという、一種の自殺行為とも思える内容であった。
今回の旅は、終始この絶望的な存在に振り回され続ける事となる。
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米軍サイトの台風進路予想だと、この辺の地方の天候は、
今日(11日)まではギリギリセーフ、明日(12日)は確実に雨、明後日(13日)は上陸で地獄といった感じのようじゃ。
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とは言え、既に台風の影響と思しき、南の方から生暖かい不気味な風が吹いてきてますね・・・。 |
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つーか13日の飛行機で東京に帰る予定なのに、全く飛ぶ気がしないじゃないですか・・・。 |
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つまり、台風の野郎が上陸する前に撮影完了しないとゲームオーバーって訳じゃ。
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わあ、この自然災害が迫る限られた時間の中でミッションを行う感じは、なんとなくゼルダの伝説のムジュラを思い出しますね・・・。 |
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いや、撮影出来ても帰れなきゃゲームオーバーですけどね・・・。 |
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白鹿権現 |
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前述の通り、白鹿権現は山深い秘境のような場所に位置しており、
例の如くレンタカー代すらケチる節約志向の我々にとってアクセスが非常に困難であった(そもそも途中からルートが未舗装の山道となる為、車移動もコスパ的に微妙と判断)。
そこで、検討を重ねた結果、我々が取った手段がこれだ。
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電動アシスト自転車!
そう、奇跡的に付近の観光案内所において格安レンタルしているという情報を入手し、首尾良く手配する事に成功したのである。
今回我々は、この電動アシスト自転車で禁断の洞窟を攻める。
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いやあ、池島の時は乗れなかった電動アシスト自転車に、まさか今回乗れるとは思いませんでしたね~。 |
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禁断の洞窟に行く割に、いささか禁断感に欠けませんか!? |
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細けえこたァいいんじゃよ! 今回はとにかく時間との勝負じゃ、さっさと辿り着かなきゃ死ぬぞ!? |
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幹線道路をはずれ、次第に人家も走行車も見当たらない山道へ。
アップダウンの連続に翻弄されたが、文明の利器たる電動アシスト自転車がなかなか快適で、
登り坂の時にハイモードにすれば、それ程難もなくスイスイ前に進めた。
ただし、徐々に減っていくバッテリーの残%数値には、常に気を配る必要があった。
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気をつけろ、マシンのバッテリーが切れたら死ぬからな! |
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ってか僕のやつだけ乗り出して即効
80%になったんですが・・・。 どうやら僕はこういうハズレくじを引く星の下に生まれたようです・・・。 |
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そういや出発前に、電動チャリを借りた観光案内所のおばさんが、なんか車体のバッテリーが満タンでない状況を論破してましたね。 |
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「90%だけど気にしないで。ほとんど100%みたいなものだから」とか言ってました・・・。論破というか暴論のゴリ押しですよ・・・。 |
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いざとなったら最悪、マシンに加速ロケットブースターでもつけて川にオチてもらうからな! |
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中間地点まで来ると、白鹿権現の看板があった。
ここの田舎道は、少し前までは工事により通行止めだったらしいが、運良くこの日は解除中となっていた。
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そして、山間の集落を抜けると、
いよいよ未舗装の山道に突入。 ここから先はGoogleストリートビューにも載っていない領域だ。
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すぐ真横にはガードレールも無い崖っぷちという、危険な下り坂を駆ける。一度ハンドル操作を誤れば、深い崖下に真っ逆さまである。 また、この前の週にもやはり台風が上陸しており、
雨で緩んだ地盤が土砂崩れを起こすのではないかという不安も脳裏をよぎる。
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どうやら今の台風の速度は自転車並みにノロノロらしいぞ! つまりワシらでも十分勝つチャンスはあるという事じゃ! |
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それに急ぐあまり、こんな所でうっかり転がり落ちたら一溜まりもないですよ! |
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当初行き帰りで半日くらいかかる事は覚悟していたが、
予想よりも遥かに速いペースで移動出来た我々。
小休止も兼ねて、タブレットの地図で現在地を確認すると・・・
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天候も今のところ持ち堪えているし、順調過ぎて逆に恐いですね。 |
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ラストスパートと思ってペダルを漕ぎ出したその時。
どういう訳か、数十メートル先に、即効で目的地の鳥居が見えて拍子抜けした。
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普通に気付かず通り過ぎそうになったじゃねーですか・・・。 |
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川原にかかる一本橋で繋げられた熊野神社の入口。
白鹿権現はここの奥の院に当たる。 まさに神の領域に相応しい厳かな佇まいだ。
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一瞬よく似ている別の場所という事も考えたが、
これ見よがしに看板も矢印を指しており、どうやらここで間違いないようだった。
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禁断の洞窟とか言う割りに親切な看板があるんですね・・・。 |
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洪水時は水没する細長い沈下橋を渡り、時代を感じさせる古びた鳥居を潜る。
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しかし左側に続く参道の階段は登らず、看板の指示通り、すぐに右側の方へ進んでいく。
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すみません、雰囲気を盛り上げようと思いまして・・・。 |
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足を滑らせぬように、崖沿いの急斜面の道無き道を進んでいく。
余談だが、シシ神の「しし」という言葉は、元々は食用の獣肉を指し、転じて「猪(いのしし)・鹿(かのしし)」という意味でも用いられる。 つまりシシ神とは獣の姿をした自然界そのものの象徴であり、人間が獣を捕獲して糧とする事と同様に、開拓により切り開かれる山や森などの自然界もまた、人間に食い物にされる存在という事を表しているのだ。
一方で、こうした大いなる自然の力に畏怖し、あるいはもたらされる恩恵に感謝し、神と同一視して崇拝するというのは、
山岳信仰として狩猟民族を中心に発展した原始的な宗教形態であり、日本では修験道や密教修行、
あるいは富士山信仰などと形を変えながらも、今尚受け継がれている。
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ギャガーーン!!
やがて行き着く岩場を注意深く見ると、一本の鎖が垂れていた。
白鹿権現はこの険しい崖の上に隠されるように存在し、
辿り着くにはこれを頼りに登っていくしかないのだ。
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さあ野郎共、最終関門じゃ! いっちょ気合入れてクライミングするぞ! |
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ギャガーーン!!
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うろたえるな若者達! ここはハイパー・ケイブ・エクスプローラーのオカフジ隊長に任せろ! |
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おお隊長、こんな所で偶然じゃな!ハニベ以来じゃねーか! |
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ハッハッハッハッ! 今回もナイスな洞窟があるって言うんで、遠路遥々やって来たって訳だよ! |
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そうですね、でもこれで僕らは後方支援に徹せそうですよ。 |
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さて、せっかく危険な鎖場を行くという事で、
今回は実験的に、ヘッドカメラ(自作)で動画撮影しながら登ってみた。
追体験で探索気分が味わえるので、是非見ていただければと思う。
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これでまるでGoProのような臨場感溢れる映像が撮れる訳じゃ! よもや普通のデジカメをガムテープでキャップにグルグル巻いて登ってるだけとは誰も思うまい。 |
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さすが閣下! あんな何万もかかるような機材無くても工夫次第でどうとでもなるという事ですね! |
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残念な撮影裏事情の話は記事でカットしないと読者にバレますよ・・・。 |
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バカヤロウッ!ヘルメットもしないで何やってるんだ! |
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落ちたら余裕で死にそうな、
ほぼ垂直に切り立った険しい崖を登る。 さすが九州最恐のパワースポットと呼ばれるだけあり、
生易しい物件とは訳が違う、試練の道のりである。
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10m程の鎖が大きく三段に分かれた崖が、全部で大体40m程続き、最終的にはとうとう鎖も無くなる。
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ズルッ!!
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ファイト一発、息を切らしながら崖を登りきると、
ようやく聖域の存在を知らせる朽ち果てた石塔が見えてきた。
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ぐはあ、そんな事より痔が再発したかもしれん・・・! |
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青白い石灰岩の鍾乳洞・白鹿権現。
“ハクシカ権現”と呼ぶのも間違いでは無いようだが、地元では“シシ権現”と呼ばれているらしい。 その見た目のインパクトと
アクセスの困難さから、九州最恐どころか日本一の最恐スポットとも見なされているようだ。
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石塔には飲み物が供えられており、
人間が出入りしている事を思わせる数少ない俗世の痕跡にホッとさせられる。
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骸骨洞窟の異名の通り、その内部にはおびただしい数の猪の頭蓋骨がギッシリと積み重ねられている。 猟師達によって毎年最初の獲物の一部を、
豊猟祈願と動物供養の為に山の神に捧げたものである。
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うーむ、この原始宗教の生々しい姿には言葉を失うな・・・! |
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こうした呪術的にまで篤い人々の信仰心は、一見すると不気味だが、それ以上に神秘さを感じさせる。
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石塔の一基に貞和4年(1348)と銘記された経筒が奉納されている事から、
少なくとも鎌倉時代には、既にこの地で信仰が行われていた事が判明しているという。
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よく見ると、頭蓋骨の中には奉納者の名前や年月日、地名が書かれているものがあり、日本各地の遠方より奉納に訪れる人がいるようであった。
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それにしても、骸骨だらけじゃな。どうしてこうなった・・・。 |
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こうして見ると、結構最近の日付が書かれたものもあるな。 古来より現代に至るまで生きづく、信仰の地という事のようだな・・・。 |
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なるほど、現在進行形という事か・・・信仰だけにな。 |
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洞窟には2つの小さな祠があり、取り囲むように積まれた猪の頭蓋骨が道を形作っている。
かろうじて日光が届く最奥部に安置された祠が、山の神の祭壇だ。
ここで猟師が参詣を終えて、境内を出た途端に獲物が捕れる程、霊験あらたかだと伝わっているという。
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異様な光景に圧倒され、ただただ息を呑む。
まさに人ならざるモノの棲家のようだ。
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もしかしたらチュパカブラのようなUMAが潜んでいるかもしれんぞ・・・! |
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せっかくの民俗学的なノリをよく分からん方に持ってくんじゃねーよ・・・! |
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薄暗い洞窟内部は、ひんやりとした神聖な空気が漂う。 山奥という事もあるが、基本的に嵐の前のように辺りは気味が悪くなる程シーンと静まり返っているが、
時折、遠くの方から「パァーン」という音が響き渡り、猟師がハンティング中である事が伺えた。
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古代からの習慣がそのまま絶えず続けられ、原始の信仰を今も見せ付ける禁断の洞窟・白鹿権現。 あまり長居していると、それこそ人間に無慈悲な大いなる存在がひょっこり帰ってきそうな雰囲気もあったので、
我々はお参りを済ますと早々に探索を切り上げ、元来た崖を下っていった。
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崖下から見ると、洞窟はちょうど、岩肌が見えている辺りに位置しており、まさに隠しダンジョンといった感じのようだった。
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聖域で旅の安全を祈願し、幸先の良いスタートを切った我々。
だがしかし、そうこうしている間にも、確実に迫り来る未曾有のスーパー・タイフーン。
奴の上陸まで残り1日半――。
次回、いよいよその影響が天候に現れ始める。
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くっそ、さっきから台風19号のイメージが人造人間19号に置換されて憎たらしさ倍増だっぜ! |
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まったく、誰か奴のエネルギー吸収してくれないもんですかね・・・。 |
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果たしてこの後、無事で済むんでしょうか僕達・・・。 |
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ハッハッハッハッ! 私は安全な今晩のフライトで一足先に帰るが、お前達の幸運を祈っているぞ! |