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旧約聖書の『出エジプト記(エクソダス)』における“海を割った”という奇跡で知られる預言者モーゼ(※脚注1)。 そんなモーゼの墓が、なんと日本の石川県に存在するという。 一体それはどういう事なのか? |
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脚注1:
紀元前13世紀頃、エジプトで奴隷として迫害を受けていたヘブライ人(古代イスラエルの民)は、神の啓示を受けたモーゼに導かれて国外に脱出し、約束の地「カナン」(現在のパレスチナ)を目指す。
その道中、ファラオは彼らをエジプトに引き戻そうと軍隊を差し向け、
モーゼ達は葦の海(紅海)で追い詰められる。
しかしこの時、モーゼが手の杖を振り上げると、なんと海が二つに割れて道が出来た。
ヘブライ人が対岸まで渡りきると海は元に戻り、追いかけてきたエジプト軍は溺れ死んだ。
その後、シナイ山に登ったモーゼは、神から十戒(じっかい)の石板を授かった――。 |
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モーゼが眠る町、石川県の宝達志水(ほうだつしみず)町。
その玄関口となる宝達駅のホームにて。
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ただでさえモーゼの墓参りとかテンション上がらないのに・・・。 |
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しばらく田舎道を歩いていると、小雨がパラついてきた。
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噂のモーゼの墓は、モーゼパークとして能登半島の最高峰・宝達山の麓に整備された公園敷地内の一画にある。
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伝説の森公園モーゼパーク(モーゼの墓) |
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駅から歩く事凡そ20分、モーゼパークに到着。
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色褪せ具合に一抹の不安を感じさせる公園の看板。
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古代神殿っぽい休憩所「ポケットガーデン」。
エジプトから民を率いて脱出したモーゼは、40年に渡って荒野を彷徨ったが、約束の地カナンを目前にしてこの世を去ったという。
そんな彼が何故遠く離れた石川県に葬られているのか? オカルト好きには有名な『竹内文献』(※脚注2)によると、
モーゼはシナイ山に登った後、天空浮船(あめそらうきふね)なる古代の飛行船に乗って日本の能登に上陸したという。
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脚注2:
『竹内文献(たけのうちぶんけん)』とは、昭和前期の宗教団体である天津教の教祖・竹内巨麿(1874~1965年)によって1928年に公開された古史古伝の歴史書。 『古事記』や『日本書紀』とは大きく異なる日本の歴史が神代文字で記された文書や写本群、文字の刻まれた石や鉄剣などの一連の総称である。『竹内文書』と呼ばれる事も多い。
6世紀頃の武烈天皇の勅命により、日本古来の歴史の記録を後世に残すべく、
武内宿禰(大和朝廷初期に活躍したといわれる伝承上の人物)の孫の平群真鳥が漢字とカタカナ交じり文に訳したとされ、
長年に渡り秘密裏に保管されてきたものを、
第66代当主となった巨麿が竹内家に伝わる神宝類として譲り受けた。
原本は不敬罪や詐欺罪容疑で巨磨が逮捕された際に、最高裁判所で提出され真偽が争われたが、
後に東京大空襲によって焼失している。
その荒唐無稽な内容からアカデミズムからは偽書とされているが、
この手の怪しいオカルトネタを盛り立てるキーアイテムとしては、一目置かれる存在と化している。 |
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伝説の森周辺のマップ。
現地の思った以上に廃墟感が漂う陰気なムードとは明らかにギャップがある、
ファミリー層を意識したようなイラストタッチに戸惑いを隠しきれない。
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この無駄に楽しげな地図見ると、なんか現在地がピークな気がするんじゃが。 |
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昔のスーファミのゲームみたいな雰囲気ですね・・・。 |
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右下の現在地周辺と全体マップの境が空間歪んでるみたいになってるじゃん・・・。 |
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モーゼの墓は、三ツ子塚古墳群のひとつである2号墳に当たる。 これは、県の埋蔵文化財にも指定されている正式な墓なのである。
また戦後、これら石川のモーゼ伝説を聞きつけたGHQによって、塚の発掘調査が行われているそうで、
墓の近くからは巨人の骨(言い伝えでは、モーゼの身長は2mあったとされる)や壷などの土器、異国風の兜、奇妙な貴金属などが出土したという。
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目指すモーゼの墓に辿り着くには、
この鬱蒼とした森の中を進んでいかなければならない。
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熊出没注意。
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こんなにデカデカと、くまモンっぽい配色で描きやがって・・・。 |
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RPGなら確実に魔物がエンカウントしそうな森の中を進んでいく。
ちょうど春先であったこの時期、冬眠から目覚めた熊が活動的になっていたとしてもおかしくはない――そんな不安が脳裏をよぎる。
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熊が出たらヨシオ、分かってるな?死んだフリして囮になるんじゃぞ。 |
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分かっております、私だけでもなんとしても逃げます。 |
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またも我々に何か得体の知れないものの存在を警告するかのような、不気味な立て札。
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いねえよバカ野郎。つーか伝説の森にも地主はいるんですな・・・。 |
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でもグレイヴ・キーパー的な奴がいる可能性はあるわね・・・油断するんじゃないわよアンタ達。 |
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散策路の途中にあるモーゼの墓記帳所。 地元の有志なのか、モーゼクラブなるグループにより建てられたもののようだ。
しかし木陰にさり気なくあり、見逃しそうになった。
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『竹内文献』に基いた伝説の解説文。
来日したモーゼが当時の天皇(神足別豊耡)に十戒石を献上したところ、
これに喜んだ天皇が娘の第一皇女である大室姫を妻としてモーゼに嫁がせた。
その後モーゼは再び来日し、余生を過ごして583歳で大往生し、この地にある
三ツ子塚に葬られたという。
ある超能力者が描いたというモーゼの墓の特別図解も載っており、
これによると、1号墳は妻の大室姫、2号墳はモーゼ、3号墳は孫のものという事らしい。
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さあ、何処でも好きなとこからツッコミ入れていいぞ。 |
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とりあえず急に出てきた超能力者と孫って誰なのよ・・・。 |
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「祈天の王国」と書かれたいかにも宗教臭を放つ謎の張り紙。
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そしていまいちよく分からない「ありがとうございます」。
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記帳用のノート。
さすがに毎日ではないものの、思ったよりコンスタントに各地からモーゼの墓参りに来る人がいるようであった。
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樹海にあるという2ちゃんねらーが置いたオカ板ノートを思い出すな。 |
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結構書いてる人いるみたいですね。九州から来てる人もいますよ。 |
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何で皆、住所まで書いてるのよ。抽選で景品でも当たるわけ? |
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せっかくなので、一応記帳しておきました。
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モーゼの墓は頂上の方にあり、
「ロマンの小路」なる山道を進んでいく必要がある。ちょっとした登山である。
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それ程険しいルートではないが、
あまりメンテナンスされていないのか、蜘蛛の巣まみれで荒れ気味の階段と悪天候、そして付きまとう熊出没の恐怖で結構移動がかったるかった。
もちろんこの時、誰1人としてすれ違った人はいない。
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しばらく登っていくと、「ミステリーヤード」という小さな広場に出た。
どうやら、この奥に見える山こそが2号墳であり、すなわちモーゼの墓らしい。
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いや、あれは恐らくダミーじゃ。墓はこの更に上じゃ。 |
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まだ登るんですか。モーゼの奴、結構もったいぶりますなあ。 |
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モーゼの伝説を説明する案内板。
しかし風雨による劣化か、肝心の文字が褪せてしまって殆ど読む事が出来ない状態だった。
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近年の研究では、モーゼが海を割った奇跡というのは、史実に基くものだという説が挙げられている。
アメリカ国立大気研究センターのカール・ドレウス氏によれば、
これまで一般的に紅海とされていた二つに割れた葦の海は、
実はナイル川デルタ(三角州)の北東部にあったラグーン(潟湖)が誤訳された可能性があり、
強烈な風が吹くなどの特定の条件下によって、
水が数時間に渡り無くなった状況が発生し得るのだという。
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ここから先はもはや獣道の急斜面。
何処からともなく丸太がゴロゴロ転がってきてもおかしくはない。
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埋蔵文化財の眠る土地である事をアピールする標識。
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何かしら埋まってるぜ、という事が言いたいようですね。モーゼとか。 |
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ところで、当サイトとも長きに渡り友好関係にあるASIOS代表の本城達也さん(『超常現象の謎解き』管理人)も、以前モーゼの墓の現地調査に訪れている。
その際、本城さんが県の教育委員会文化財課に問い合わせたところ、三ツ子塚古墳は埴輪などの出土物の存在に加え、
山伏の修験道の通り道であったという歴史背景を考慮して文化財指定となったものであり、
モーゼの墓にまつわる伝説とは、特に関係ないという回答を受けたそうだ。
また、戦後の昭和20年代に米軍兵士が発掘に訪れたという事は実際にあったそうだが、その時は人骨は出土せず、
GHQの関係者による公的な調査であったかどうかは不明なのだという。
【参考】 超常現象の謎解き モーゼの墓
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しばらく急斜面を登っていくと、
とうとう道らしきものすら消え、本当にこのルートでいいのか不安になってきた頃・・・
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ようやく我々はモーゼの墓に辿り着いた。
その割りに拍子抜けするくらい簡素な作りである。
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墓標の傍には何故かシーサーが置かれていた。 魔除けなのだろうか。
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モーゼと何の関連があるのかさっぱり不明ですね・・・。 |
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「モーゼ一族霊団供養」というマジックで書かれたような文字が、現場の脱力感をより高めていたように思う。 しかし、せっかくわざわざ来たので、大人な態度でお賽銭とお祈りを捧げておいた。
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奇想天外な伝説が残るミステリースポット、モーゼパーク。
我々は胸に込み上げる何かを抑えながら、同地を後にした。
あなたも石川県に訪れた際は、古のロマンに思いを馳せながら、モーゼの墓参りに訪れてみてはいかがだろうか。
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