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日本各地の寺社には、参拝者の祈願や感謝の念を表す様々な奉納物が供えられ、
結果的に奇妙な光景と化している事もしばしば。 そんな中で、群馬県みどり市に鎮座する「はね瀧道了尊」では、グルグル巻きの“ねじりん棒”を供えるという、少し変わった信仰が250年以上も続いている。
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「ネジネジだって?」と、中尾彬も興味を持ちそうなその道了尊は、
風光明媚な渡良瀬川の沿岸、わたらせ渓谷鉄道の線路に面した場所にある。
目と鼻の先に架かる「はねたき橋」(※1)が、自殺の名所にして心霊スポットである事を無視すれば、
綺麗に整備された広場に隣接する素敵なロケーションだ。
※1:「はねたき」という名は、橋の下の高津戸峡は岩で狭まっていて、跳ねて飛び散る水が滝に見えた為、
鱍瀧(はねたき)と言われた事が由来だという。
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境内は小ぢんまりとしているが、
昔から地元の大間々町では「どうりゅうさん」と呼ばれ、請願成就、子育ての仏様として親しまれてきたそうだ。
記録によれば、江戸時代の宝歴2年(1752年)に、神奈川県足利市の最乗寺よりこの地に勧請されたという。
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以前は「道了堂」として、現在地の北側約100mの斜面を下がった所に建っていたらしく、
川沿いの参道には「滝の湯」という湯屋と茶屋が並び、毎月2日間に渡り縁日が開催されるなど、大変賑わっていたようだ。
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ところが、1947年のキャサリン台風によって、道了堂は湯屋と茶屋もろとも、
一瞬のうちに渡良瀬川の濁流に飲み込まれ、跡形も無く流されてしまったという。
その後、信仰は衰退していき、僅かな信者によって細々と続けられる事となった。
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しかし、時は流れて2003年、地元民の強い要望もあり、近所の光栄寺が開山400年を記念し、
境外仏堂の「はね瀧道了尊」として、より安全な現在地に移転・再建したのである。
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境内の奥にある道了尊(※2)は、不動明王と合体した烏天狗の姿をしている。
像はそれ程大きくないものの、フィギュア映えする造形が妙にカッコ良い。
子供の心に宿ろうとする悪鬼を睨みつけているそうだ。
※2:そもそも道了尊は、室町時代に大雄山最乗寺にいた「妙覚道了」という修験道の僧が由来。
伝説によると、元々滋賀県の別の寺にいた道了は、師匠の僧・了庵慧明が最乗寺を開創するという話を聞くと、
空を飛んで駆け付け、500人分の力量を発揮し、土木工事に大きく貢献したとされる。
その後、1411年(応永18年)に慧明が没すると、
「大雄山を護り多くの人々を救済する」と言って天狗に姿を変え、山中に身を隠したという。
こうした事から、最乗寺は寺の守護神として道了大薩埵(どうりょうだいさった)=道了尊を祀ったそうだ。
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そして、悪鬼を懲らしめるべく、右手にねじり木を、左手に綱を持っており、
さながらケツバットで指導するスパルタコーチのようでもある。
供えられた天然のねじり木、通称ねじりん棒も、なんとなくロンギヌスの槍や魔法の杖など、
人気作品に登場するアイテムを彷彿とさせ、つい中二心がくすぐられてしまう。
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また、煩悩を焼き尽くす火焔を背負い、疾風より早く駆け付ける白狐に乗っている。
立派な羽で直接飛んだ方が早い気もするが、
荷物が大きい事もあってか、あえて眷属を足に使うスタイルのようだ。
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古い記録によると、
昔からこの道了尊では、例えば非行や不登校など、心の捻じれた子供を立ち直らせる為に、
参拝した親がねじり木を1本持ち帰り、「拗ねた心の子供は、すなをなれかし」と朝夕唱えて祈願するとされている。
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そして、願いが叶った暁には、お礼にねじり木を2本にして戻すシステムらしい。
故にお堂の横にある祠には、奉納されたねじりん棒が多数並んでいる。
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まるで、ねじりん棒マニアの烏天狗が集めたコレクションのようである。
一体何処でこんなに見事に捻じれた木を拾って来たのだろう。
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よっぽど心が捻じれていたのだろうか、原始人が持っていそうなくらい太い棒も。
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この道了尊信仰の風習が、現在どれくらい忠実に行われているかは不明だが、
いずれにせよ、結構な人数の子供が更生しているようなので何よりである。
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天狗の大下駄。 山野を駆ける天狗のような健脚でいられるように、下駄を触って祈願するらしい。
なお、日中は表面温度が高くなる為、火傷に注意との事。
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未来を担う子供が真っ直ぐ育つよう願う場として、
地元で愛されている道了尊。
もし、あなたの身近に心が捻じれた“ねじりん坊”(造語)がいるなら、参拝してみると良いだろう。
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