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東北地方の高原に林立する河童像の数々は、鬱蒼とした草木に飲み込まれつつあり、まるで古代遺跡のような雰囲気を漂わせていた。
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福島県田村市の温泉旅館「花の湯」の敷地内、駐車場の奥に位置する一画に、「かっぱ村」と呼ばれる不思議な場所がある。
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正式名は「ふねひき町 工芸の里」。
所在地である船引町の工芸品や骨董品を販売する施設が元々あったようだが、訪問時は閉鎖されていた。
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入口付近は資材置き場のように雑然としており、およそ来客を想定している雰囲気ではなかった。
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そして、あちこちに版権キャラを模した像など、謎のオブジェが屹立、または転がっていた。
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数台の廃車や吠える番犬、蜂の大群の羽音(※2)に不安を感じながら進むと、
河童道祖神と並んで、茂みから背の高い河童が出現。
※2:2018年5月の訪問時点では、植物が伸び放題で荒廃が進んでいる状況だった。
また、養殖中だったのか奥の東屋では蜂が大量に飛び回り、戦場の如く体勢を低くして移動せざるを得なかった。
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そして、このアーチ状の門の先が、メインのカッパーフィールド。
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多数の河童が楽器を持つオーケストラが並んでいる。
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背後には東屋が建ち、ピアノを弾くカエルや河童のフラダンスなどの姿も。
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周囲の草陰をよく見ると、他にも様々なスタイルの河童が保護色で紛れ込んでいた。
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また、最奥部には河童の祠や仏像群も隠されていた。
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これらは近くにある「下里工芸(下里セメント工業)」の主人・箭内隆寿氏の作品で、町興しを目指して展示されたものらしい。
河童像(※3)を主役にしたのは単に作りやすかったからだそうだが、それも段々飽きて多種多様のモチーフに挑戦しだしたという。
※3:全部で150体以上あるらしい。
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アトリエである事業所も作品で溢れ返り、とてもカオス。
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中でも、ミニチュアの城の隣で目の前の交差点を見守ったり、外壁をクライミングするスパイダーマン像が印象的だ(※4)。
※4:展示作品は望めば購入も可能だったそうだ。
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元々は定年後の趣味として、独学でコンクリ像の創作を開始したという。
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やがて花の湯の敷地を借り、数人の仲間達と町興しで「工芸の里」運営を計画するも、色々あって最終的に箭内(やない)氏だけで活動を続ける事となった。
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90歳頃まで膨大な数の作品を次々に生み出したが、惜しくも2020年10月に他界され、作品群も現在は撤去されつつあるようだ。
心よりご冥福をお祈りしたい。
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1人の職人の地元愛と創造力が生んだパラダイスが、そこにはあった――。
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