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[2020.08.23]

伝承園
~人々の願いが詰まった神秘のオシラ堂~



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“民話の里”岩手県遠野市に点在する名所の中でも、 地域の象徴的景観(※1)の一つとして人気が高い「カッパ淵」。

※1:もちろん、ウィキペディアの「遠野市」ページでも代表写真になっている。

この河童伝説が残る風光明媚な清流のすぐ傍に、是非セットで訪れてみてほしい、「伝承園」という名の施設がある。


カッパ淵名物“河童釣り”に必要な「カッパ捕獲許可証」も、そこで購入する事が出来る。そう、河童ツーリストは訪問必須の地なのだ。


遠野は周囲を山に囲まれた盆地だが、かつては交通の要所として栄えた。
その為、各地からの旅人によって様々な物語が集まり、互いに影響し合いながら長い年月をかけて、独自の土地の伝承として醸成された。
そして明治以降に主要な交通網から外れ、近代化の波から取り残された結果、古き良き時代の日常と伝承が交錯する異境が形成されたのである。


カッパ淵の方から来て、古い鳥居(早池峰参詣古道の入口)を横切ると、 道端で河童像“安全太郎”が交通安全を見守っている。これこそが伝承園の目印。


そして、いかにも昔話に出てきそうな茅葺き屋根の建物が、その玄関口となっている。


ここは、かつての遠野の暮らしが再現された郷土歴史博物館。
昔話、伝承行事、生活道具、民芸品などに触れあえる場所である。


園内には、移築された農村の古民家が複数並び、NHKの朝ドラを髣髴とさせるノスタルジックな雰囲気が漂う。








他にも、民俗学の父・柳田國男が著した『遠野物語』の話者・佐々木喜善の記念館や、 工芸館、水車小屋、金精様の祠、郷土料理が食べられる食事処などもある。




訪問時は何故か、「遠野萌えキャラプロジェクト」なるものが行われ、伝承園にちなんだ萌えキャラのイラストが展示されていた。
伝統文化×現代サブカルチャーのコラボである。




特に1750年頃に建てられた「旧菊池家住宅」は、“曲り家”と呼ばれるL字型の貴重な建物で、国の重要文化財にも指定されている。






曲り家の内部に入り、囲炉裏の間や蚕の飼育場、細長い廊下を抜けると・・・




一番奥の御蚕神堂(オシラ堂)に辿り着く。


6畳程の室内には、四方の赤い壁いっぱいに“オシラサマ”が1000体も安置されており、その神秘的な光景に圧倒される。


オシラサマは、東北地方で信仰されている家の神(蚕や農業、馬、お知らせの神でもある)。
映画『千と千尋の神隠し』では大根を擬人化した姿で登場したが、 一般的には顔が彫られた桑の木の棒に衣を着せたご神体が多く、家の神棚などに祀られている。


『遠野物語』によれば、オシラサマは元々ある農家の娘だったとされる。
彼女はなんと飼い馬に恋をし、ついには夫婦となった為、怒った父親がその馬を殺して木に吊り下げ、首をはねた。 悲しんだ娘はその馬の首に飛び乗ると、天に昇って神になったという。


まるで、カラフルなてるてる坊主のようなご神体の着衣は、訪問者が布に願い事を書いて奉納したもの。


蓄積された祈願は不気味な程に濃厚。
圧迫感のある只ならぬ雰囲気に、中には入れなかったり、体調を崩してしまう人もいるとか。
だが、脈々と受け継がれる伝承や信仰が体感出来る、遠野郷らしい異空間なのである。


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