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[2020.07.24]

道の駅大歩危・妖怪屋敷
~怪遺産認定の子泣き爺の故郷~



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四国山地を流れる吉野川沿いの美しい峡谷・大歩危(おおぼけ)。
この秘境周辺では、奇妙な地名と山霧漂う神秘的な雰囲気が示唆する通り、実に160カ所以上の妖怪伝説が語り継がれている。


「大歩危」という変わった名の由来は、「大股で歩くと危ない」からという説と、断崖を意味する古語「ほき(ほけ)」から付けられたという説がある。
明治時代には「大歩怪」の字で書かれ、まさに妖怪変化が闊歩しそうな地名だった模様。


子泣き爺(児啼爺)の故郷でもあり、彼が大歩危駅の駅長を務めている。
山中で赤ん坊のような泣き声をあげ、通行人が抱き上げると、体重を増加させ押し潰すとされる老人姿の妖怪である。


柳田国男の著書『妖怪名彙』で記述され、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で一躍有名に。
2001年には、地元の有志によって付近の妖怪街道に児啼爺の石像が建立された。
その台座には水木しげる氏、石碑には京極夏彦氏の直筆文字が彫られている。


駅から国道を1km程進むと、何やら「妖怪屋敷」の看板を掲げた施設がある。


徳島県三好市の山城町に位置するこの「道の駅大歩危(ラピス大歩危)」は、元々1996年に石の博物館及び観光案内所としてオープン。


その後、2008年に世界妖怪協会が、同町を「怪遺産」(※1)に認定。

※1:妖怪をテーマに執筆活動を行う作家らが作った世界妖怪協会(会長・水木しげる)と、季刊雑誌『怪』が設けた制度。 妖怪文化の普及に貢献した地域、自然、文化が対象で、徳島県三好市は2例目。
他には岩手県遠野市、鳥取県境港市が認定されており、 これら3県が地域活性化を推進すべく連携・交流を深める「怪フォーラム」が毎年開催されている。

そんな感じで、“妖怪村”として地域興しを進める中で、2010年に伝承資料館である妖怪屋敷が道の駅に設置された。
館内には他にも、喫茶店、土産売り場、足湯なども併設され、山城・大歩危妖怪村の拠点施設となっている。


妖怪屋敷の入口は、意外とモダンな自動ゲート。
2階の石の博物館と入場がセットになっている。


大天狗が出迎える細長い通路を抜けると・・・


メインの展示室に辿り着く。
もっとおどろおどろしい雰囲気かと思いきや、内部はあくまでミュージアム風。


ここには、 伝説を後世に遺すべく地元住民が作った、素朴な味わいの妖怪像が約70体展示されているのだ。






広々としたウッド調の空間に、大天狗、鬼婆、一つ目入道といった有名勢から・・・








山じち、美女狸、化粧狸、うどん狸、汽車狸などのマイナー妖怪(狸多過ぎ)まで並び、さながらシェアハウス(※2)のようだ。

※2:テレビ朝日の新ドラマが面白そうなので、つい放送開始時期に合わせてこの記事を制作。


「のぞくな」と大きく書かれた、穴の開いた障子。
秘宝館でも見かけられたが、かえって覗きたくなってしまう人間心理を突いた、罠のような展示だ。 内部は実際に訪れて確かめてみてほしい。






山里と水辺に出現した妖怪や、人間に退治された妖怪など、ちゃんとジャンル別に展示されている。


他にも真っ当な文献資料や、憑き物関連の展示、妖怪の出現地点を示す立体地図模型、クイズ・紙芝居コーナーなど様々な見所がある。


ソッコーで出口に辿り着くが、一応「山城坑道」なるミニお化け屋敷も。




とりわけ“巨大な閻魔大王像”がラスボスの如く鎮座する広間は圧巻の迫力。








科学の発達に伴い姿を消した妖怪達だが、この地(※3)にとっては単なる昔話ではなく、今も共に生き続けている存在なのである。

※3:古来、国境を守る武士達によって急峻な地形に切り開かれたこの山里は、 平地がほとんど無く、崖や淵などで事故や災害に見舞われる危険と常に隣り合わせだった。
その為、恐ろしい妖怪の話をする事で、自然の厳しさや尊さを子供達に伝え、危険な場所や山の神の森に近づかぬよう、 身を守る知恵を与えたのではないかと考えられている。


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