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群馬県安中市の碓氷峠に架かる「碓氷第三橋梁」――通称「めがね橋」は、
峠攻めのドリフト走行でスルーするには惜しい(※1)、明治・昭和時代の鉄道遺産だ。
このレンガ造りの美しいアーチ橋が象徴するように、軽井沢の玄関口に当たる同地域は、古くから交通の要衝であり、また難所でもあった。 だからなのか、全国的にも珍しい“交通安全の観音像”が屹立し、人々を見守っているのである。
※1:余談だが、碓氷峠(及び群馬周辺)は漫画『頭文字D』の聖地である。
新道も旧道もカーブが非常に多く、通行する者は車種や運転スキルを問わず、
つい走り屋っぽい好戦的な口調にさせられてしまうのだ。
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峠を降りてやって来たのは、
市内中心部に鎮座する「龍昌寺(りゅうしょうじ)」。
江戸時代の元和2年(1616年)に創建された、400年以上の歴史を持つ曹洞宗の古刹である。
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同志社大学の設立者である新島襄氏が、874年にアメリカから帰国した際、
初めてキリスト教の伝道演説をした場所としても知られているそうだ。
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参道には、108(煩悩の数)ある和合の梵鐘がズラッと並ぶ。
つい鐘を叩きながら一気に駆け抜けたくなる光景だ(小学生かよ)。
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掃除中だった住職に挨拶しつつ奥へ進む。
かつては七堂伽藍(7つの寺の建物)が建ち並んでいたそうだが、
明治の廃仏毀釈で本堂と山門以外は解体されたという。
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唯一、当時のままの姿を残す本堂の正面には、手作り感漂う達磨像が安置され、
強面でギンと睨みを利かせていた。この辺りは高崎ダルマが有名だからだろう。
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本堂の裏手には墓地があり、奥の植え込みの辺りに、何やら背の高い像が立っている。 |
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そう、これこそ、噂の「交通安全大観音」である。
その名の通り、交通安全を祈願し、1984年(昭和59年)に建立されたという、高さ5.8mの観音像だ。
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なんとこの観音像、事もあろうに文明の利器たる自動車に乗っている・・・というか、自動車の上に立っている(※2)ではないか。
“交通安全”を謳う割に、マッドでヒャッハーな世紀末の様相を呈しているのだ。
※2:より正確に書くと、蓮の花の上にある自動車の上の雲の上に乗っているという、実に奇妙な状態だ。
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このクラシックな自動車は、アメリカのフォード社が開発した「T型フォード」。
20世紀初頭に販売された史上初の大衆車であり、モータリゼーションの時代をもたらした歴史的な車である。
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車を覆う雲が土煙のようでもあり、むしろ爆走しているように見えてしまう。
もはや「峠で速い奴が一番かっこいいんだ」(※3)とでも言いそうである。
※3:©頭文字D
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オカルト的な視点で見ると、
『旧約聖書』の一書『エゼキエル書』に登場する神の乗り物、「メルカバー」にも雰囲気が似ている。
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見た目は奇妙だが、世の中から悲惨な交通事故を無くし、
交通事故に遭った人々を慰めたいという、真摯な思いから建立された像のようだ。
また、群馬県は自動車王国(※4)であるが故に、交通事故発生件数も全国トップ10に入り、
恐らくそうした背景も関係しているのだろう。
※4:「人口1人当りの自動車保有率」が全国1位らしい。
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さて、観音像の目線の先には、ちょうど平屋が建っている。
休憩所か倉庫の類かと思いきや・・・
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看板には、まさかの「世界乗り物館」なる表記が。
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半信半疑でガラガラと引き戸を開けると、内部は左右が大きなガラス張りで、ちょっとした展示室のようになっていた。
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足元には何故か、ミニSLマシンがあった。
冒頭で触れた「めがね橋(碓氷第三橋梁)」でも、かつてはSLが走っていたので、その繋がりだろうか。
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そして壁一面の棚には、大量のミニカーがズラッと陳列されている。
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これらは車好きであった先代住職のコレクションらしい。
そう、趣味が高じた結果、墓場の中に私設ミュージアムを建ててしまったのだ。
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一般的な乗用車タイプの他、ショベルカーやクレーン、トラックにバスなど、様々な種類のミニカーが集結。
童心を思い出す素敵な眺めである。
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陳列の仕方にもこだわりが伺え、
現地では正直ピンと来なかったが、よく見たらミニカーで「祈 交通安全」と形作られていた。
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棚の最上段には一応、様々な仏像も安置されている。 趣味と信仰が入り混じる独特な空間だ。
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しかし公私混同の一方で、交通安全を願う長年の啓蒙活動が認められ、
「交通栄誉賞 鍵十字勲章」を授与されているようだから、大したものである。
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寄進ならぬ喜心と書かれた木鐘。
唐突にウィンクするネズ公の姿が、珍スポ度を上げてくれていた。
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円形の交通安全大観音絵馬。
絵で見ても、やはり観音様の大胆なデザインに脱帽である。
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信号機をイメージした配色っぽい、浄財ボックスも。
黄色の筒から硬貨を入れて音が聞こえれば、幸運が訪れるそうな。
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室内の一番奥には、交通安全大観音の木像が安置されていた。
車やミニカー好きの人にはお勧めの聖地である。
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