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[2023.05.14]

安達ヶ原ふるさと村
~怖くて美味い衝撃の鬼婆テーマパーク~



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おどろおどろしいホラー系の昔話として有名な「安達ヶ原の鬼婆伝説」。
子供に語るには少々刺激が強い、奈良時代に発生したという猟奇殺人事件だ。
現在、惨劇の舞台となった安達ヶ原地区(福島県二本松市)には、連続殺人鬼たる鬼婆の霊を鎮めつつ、 町興しで彼女を推したテーマパークが建っている。


当サイトでは以前、阿武隈川の畔にある鬼婆の墓「黒塚」と、鬼婆の棲家(岩屋)などが残る「観世寺」といった史跡をご紹介した。
しかしこの時は、すぐ隣にあるにもかかわらず、既に営業終了時間だった為、「安達ヶ原ふるさと村」だけは 泣く泣くスルーしたのであった。


そんな訳で、リベンジを果たすべく、数年ぶりに安達ヶ原へ再訪。
目当ての「安達ヶ原ふるさと村」は、 1993年に平成のふるさと創生事業(数々の珍スポが誕生)でオープンした、鬼婆伝説がモチーフの観光施設。
その入口には、レストラン・売店を内包した道の駅「ふるさと館」がある。


看板に描かれているのは、2代目マスコットキャラの「バッピーちゃん」。
ガングロで包丁を持った初代キャラは、子供に怖がられて不評だったらしく、鬼婆を親しみやすい感じにデフォルメしたようだ。
なお、今度は早く来過ぎて営業開始前だったので、店は後ほど寄る事にした。


敷地の全体図はこんな感じ。
観世寺を抱く形で、広々とした緑豊かな自然公園となっている。
まさに現代の安達ヶ原といった感じである。


村への入口はトンネルになっていた。
以前は入場料1000円だったそうだが、集客的にヤバかったのか、2007年4月から無料開放されたという。


有料時代は、鬼婆伝説を再現した「黒塚劇場」があり、精巧な老婆ロボットが語り部で登場したそうだ。
しかも二舞台方式で、後半は客が180度向きを変えて、老婆ロボが鬼婆ロボに変身するという、何気にハイテク仕様だったらしい。


トンネルを抜けると、そこにはシンボルの五重塔が。
観世寺に訪れた時は、普通に境内にあると思って探したものだが、紛らわしい事に公園側に建っていた。



以前はこの内部に、 黒塚劇場の閉鎖に伴い失職した鬼婆ロボが棲んでいた(置かれていた)そうだが・・・


今では鬼婆とは真逆の観音像が鎮座している。
血塗られた地であった安達ヶ原は、すっかり浄化されたようだ。
しかし、デーンとした見た目の割には、内部がえらい狭い。


またここは、ちょうど観世寺の真裏に当たり、本堂の屋根が近くに見えた。



五重塔の近くには、「先人館」という建物がある。
二本松に縁ある文化人の業績や、アーティストの作品などが展示されている施設だ。


館内は有料(大人200円)で、全体的に真面目な雰囲気。
だがそれでも、わざわざ覗いておきたい理由があるのだ。

と言うのも、実はここのロビーには・・・


鬼婆ロボが変わり果てた姿で隠居しているのである。
「どうしてこうなった・・・」と思わずにはいられない、衝撃の反社会的勢力ぶりだ。


引退して枯れるどころか、 「介護上等」「延命鬼畜」などと書かれたサイバーパンクなマシン(少しフリーザっぽい)に跨り、 老人ホームでブイブイ言わせて余生を満喫中といった感じである。
元々、逃げる旅人を追いかけたりして俊足だったようだが、もはや怪異としては、 ターボババアやジェットババアに近いかもしれない。


このリアルな鬼婆ロボの製造元は、株式会社ココロ。
2005年の「愛・地球博」において、人間そっくりの受付嬢ロボ「アクトロイド」を作って注目を浴びた企業で、 サンリオのアニマトロニクス部門でもあるそうだ。


皮膚の部分はシリコン製で、現役当時の黒塚劇場では、 劇の進行とともに老婆の額から徐々に角を生え、顔が歪んで鬼婆へと変身する仕掛けだったという。
しかし、かつては「最新エレクトロニクス」と謳われた存在の末路が、まさかこのような、珍スポ的出オチ要員となろうとは。


そして、鬼婆というか鬼爆(昔の不良漫画)的なこの状態は、 福島ガイナックス(現・ガイナ社)という地元企業(アニメ会社ガイナックスの元子会社)によるもの。
以前イベントの為にロボを使って制作した、その名も「安達ヶ原のヤン婆」という作品らしい。 そう、ヤンキー×鬼婆という訳だ。


許可を得たとは言え、 ヤン婆をバシャバシャ撮っていたら、受付の老婆(人間)に怪訝な目で見られたので、ぼちぼち公園の中心部へ。


園内には、2011年の東日本大震災をきっかけに設置された、屋内で遊べるキッズパークがある他・・・



遊具や茶室、江戸・明治時代の武家屋敷や養蚕農家などが建ち並んでいる。
なんとも長閑な雰囲気だ。


訪問時はちょうど、餅つき大会の準備が行われていた。
地域行事の場としても活用されているようだ。


だが、断腸の思いで無料配布の餅をスルーし、 開店時間になったので、先程のふるさと館へ。


物産販売店を覗くと、まさかの鬼婆グッズが多数展開。
「オニババ煎餅」や「ドクロ最中」など、ドス黒い菓子がメインで並んでいた。
バッピーちゃんのみならず、リアルな鬼婆(ヤン婆)も果敢に商品化され、殺気を放っているではあるまいか。


こちらは新商品らしい「鬼婆伝説まんじゅう」。
鬼婆の顔を全面に押し出した、一か八かの力強い販売訴求である。
職場の土産にでも買っていって、苦笑いされるのも一興だろう。


「鬼婆ラムネ」なる炭酸飲料もあった。
パッケージに書かれた「岩手の秘め事」、「愛娘と別れ、残虐な決意を胸に秘め――」(※1)という、 およそ飲み物に相応しくないコピーがそそる。
ちなみに訪問時はブルーハワイのみだったが、血のようなコーラやイチゴ味もあるようだ。

※1:元々鬼婆は、京都の公卿屋敷に仕える「岩手」という名の乳母だった。
ある時、可愛がっていた姫が不治の病にかかった為、岩手は「妊婦の生き肝を飲ませれば治る」という占い師が告げた迷信を信じ、生れたばかりの娘を残して旅に出る。
やがて安達ヶ原に辿り着き、妊婦を待って旅人を襲うようになった。


「血のり風甘味噌」。それにしても、商品がいちいち血生臭いったらありゃしない。


続いて、売店の隣りにある「お食事処よってっ亭」へ。


ここでは、2021年に登場した「鬼婆グルメ」を味わう事が出来る。
ふるさと村を運営する二本松市振興公社のスタッフが、安達ヶ原らしさとSNS映えを追究して開発した挑戦作で、 「怖くて美味い」と評判らしい。


世にも恐ろしいオカルトカレー、「オニババ出刃ーグカレー」。
無理矢理なネーミングも含め、インパクトがえげつない。
サラダと鬼婆のオリジナル缶バッジ付きなのは、地味に魅力である。


今回は念願だった「おにばばソフト」を注文。
いざ現物を前にすると、食べるのが一瞬躊躇われる、スイーツらしからぬ迫力だ。
腕の部分は出刃包丁と骨を象ったクッキー、血はストロベリージャムで表現されている。
映える見た目の面白さだけでなく、ボリュームもたっぷりで、鬼ヤバい美味さであった。


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