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[2022.11.09]

アウカナ佛
~スペシウム光線ポーズのウルトラブッダ~



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映画『シン・ウルトラマン』の大ヒットは記憶に新しいが、 栃木県鹿沼市には、宇宙から来た銀色の巨人を彷彿とさせる、珍しい造形の大仏が立っている。
「珍寺巡礼」、私の好きな言葉です・・・という感じの人ならば、是非参拝すべき存在と言えよう。


市街地に位置する末広町の商店街通りに、趣深い山門を構える「清林寺」。
今から約700年前、岌無鈍山上人によって開山され、その後、 室町時代に尼僧“清林”によって再建された古刹だ。


訪問時は秋だったが、 春には牡丹が咲き誇る名所として、地元で知られているらしい。
そんなこの寺の境内で、噂の大仏は衆生を見守っているのである。


参道の中ほどまで進むと、 高さ16m(台座を含むと19m)の釈迦立像、その名も「アウカナ佛」が姿を現した。


案内板によると、この大仏は今から約1600年前の5世紀頃、 スリランカ中部のアウカナに建立された仏像=アウカナ佛をコピーしたものらしい。
古代スリランカを代表する大仏で、シンハラ王朝のダートゥセーナ国王が、 カラーウェアという貯水池を造った際、その偉業の記念に花崗岩を彫り出して造られたという。


特徴的なのが、 エキゾチックな顔立ちと、「おいっす~」と言わんばかりに上げられた右手。 尖った頭部の形状も相まって、スペシウム光線でも放ちそうな印象である。
「シン・ウルトラマン」ならぬ「チン・アウカナブツ」だ。


右手を上げているのは、世の中の人々の安らかな暮らしを祈る姿らしい。
これは施無畏印(せむいいん)という印相(仏像のハンドサイン)で、「恐れなくてよい」という意味を持つようだ。


横から見るとこんな感じ。
清林寺とスリランカ仏教界との親密な関係から、 1987年(昭和62年)、スリランカ政府よりアウカナ佛の型を取る事を奨められ、 境内にレプリカが建立された。
完成の折には、当時のスリランカ大統領や大臣も開眼供養に駆け付け、 その時のニュースは、3日間に渡ってスリランカ国内で報じられたという。


背後に回り込むと、下の方に小さな扉のようなものが。
点検口なのか、その気になれば内部に入れる造りなのだろうか。


スリランカのオリジナル像は岸壁を彫り出したものだが、 こちらはこれ程のサイズにもかかわらず、ちゃんと2本の足で自立しているのが地味に凄い。
しかし、どうやら像はFRP製らしく、表面だけコンクリが吹き付けられ、 軽量化の工夫がなされているようだ。


足元の台座には、大黒様と恵比寿様があり、日本×スリランカの友好を物語るコラボを果たしている。


さらに、スリランカっぽい象の像も。


ちなみにこの寺、1985年(昭和60年)には、スリランカとインドの大菩提会の好意により、 仏舎利の他、釈迦の弟子・舎利弗(しゃりほつ)&木連(もくれん)の舎利を迎えているとか。
この両尊者の真骨が移動し、地上に祀ってあるのは、 清林寺が世界初にして唯一の場所となっているそうだ。


境内の片隅には、「ポックリ様」なる仏様を祀ったお堂が。
正式には「青麻大権現」というらしく、一心に祈りを捧げると、 “苦痛無く安らかにポックリ往生出来る”とされているそうだ。


本当に拝んで良いのか少々心配になるが、「詳しい拝み方は寺に聞いてください」との事。


寺の外から引きで大仏を撮ったら、「シュワッチ!」的な感じで、 手前の家の屋根を突き破って出てきたみたいになった。
そんなに日本が好きになったのか、アウカナブツ――とでも言いたくなる眺めであった。


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