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[2006.05.20]

『岩窟の聖母』の謎


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▲ルーヴル美術館版▲ロンドン・ナショナル・ギャラリー版
奇妙な事に、ダ・ヴィンチは『岩窟の聖母』なる絵画を2点描いている。
左側がルーヴル美術館、右側がロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されている作品だ。
何故、完成品が数少ないダ・ヴィンチが、同じ絵を2点も描いたのか?
『岩窟の聖母』は、ダ・ヴィンチがミラノ滞在中の1483年4月25日に、無原罪の御宿り信心会にサン・フランチェスコ・グランデ聖堂の祭壇を飾る三連画の中央部分として依頼されたものである。
『岩窟の聖母』は原罪(性交)を犯さずにイエスを宿した聖母マリアの姿「無原罪の御宿り」が主題と考えられ、ヘロデ王が2歳以下の嬰児を虐殺する為に放った兵士から逃れるべく、エジプトへの逃避中、砂漠の洞窟に身を隠したヨセフとマリアと幼子イエスが、大天使ウリエルに守られた幼い洗礼者ヨハネに出会う場面を描いたとされている。
元々依頼されて描かれたルーヴル美術館版は、画面全てがダ・ヴィンチの真筆とされ、本来はサン・フランチェスコ・グランデ聖堂の祭壇を飾る作品であったが、1485年に完成したこの絵の構成が、黄金の葉が散りばめられ、智天使(ケルビム)が宙を舞い、旧約聖書の預言者達の霊が間を埋めるという、当時の流行りであった豪華な出来栄えを所望した信心会側の意図に大きく反しており、また、制作が遅れた事もあり、信心会が支払いを渋り、評価額25ドゥカーティに対し、ダ・ヴィンチは100ドゥカーティを要求した為、その後、長期的に支払金を巡る訴訟が両者の間で続き、契約から25年後の1508年10月になって、ようやく金銭の支払いがなされ、この作品は結局、それを仲裁したフランス王ルイ12世に献上され、現在パリのルーヴル美術館に展示されている。
そして、そのオリジナル版を安売りしたくなかったダ・ヴィンチは、しぶしぶ依頼主の意図に沿ったコピーをもう1枚描き(弟子のデ・プレディス兄弟に描かせたとされる)、それを最終的に信心会に渡したのである。
そのコピーの絵が、現在ロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されている方だ。
ずいぶん手間のかかった間違い探しですネ。
確かに、その感想は稚拙だが、的を得ているとも言えよう。
まずは、ルーヴル美術館版の方から見てみよう。
岩に囲まれた洞窟は、生命の誕生を司る母の胎内を暗示していると思われ、中央に聖母マリア、その左に洗礼者ヨハネ、右に祝福を与える幼子イエスと大天使ウリエルが配置されているが、神格の象徴である光臨が描かれておらず、また、聖家族のエジプト逃避の場面であるにもかかわらず、ヨセフの姿が無い。
さらに、通常ならば、洗礼者ヨハネはアトリビュートである獣の衣や十字の杖等が描かれ、幼子イエスと明確に区別が図られるが、それが無い点から、祭壇画としての役割が果たせない事もあり、依頼主の信心会に受け取りを渋られたのである。
聖母マリアが幼子イエスと洗礼者ヨハネを、大きく手を広げて祝福しているが、この2人の幼児がどっちがどっちであるかについては諸説あり、『ダ・ヴィンチ・コード』においては、向かって左をイエス、右をヨハネとしており、2人の幼児が似ているのは、ダ・ヴィンチが意図的に両者が誰であるのかぼかしたものと考えられるという。

▲ルーヴル美術館版▲ロンドン・ナショナル・ギャラリー版
そして、マリアは通説でヨハネとされる幼子を右手でかばう様に優しく抱く一方、イエスの頭上には、まるで鷲の鉤爪の如く、威嚇の姿勢を示している様に片手をかざしている。
また、大天使ウリエルは、マリアに抱かれた幼子を人差し指で差し、マリアの鉤爪につかまれた目に見えぬ頭部を、喉元あたりで掻き切る仕草をしつつ、意味あり気な視線を鑑賞者に向けている。
ここで『ダ・ヴィンチ・コード』でも唱えられた説として、大天使ウリエルが洗礼者ヨハネの守護天使である事から、洗礼者ヨハネがイエスを祝福しているという、通説と逆の解釈をしてみたらどうだろう。
マリアと一緒にいるのがイエスで、ウリエルと一緒にいるのがヨハネとすると、ヨハネがイエスに祝福を与え、イエスはそれを拝受している事になる。
また、マリアは我が子を守りながら、片手を幼子ヨハネの頭上に掲げ、その手の下にはウリエルの手が横切っているという、これらの仕草は、幼子の1人が首を斬られて死ぬ事を暗示しているとすれば、その見えない頭が真上に位置している事からも、ウリエルと一緒にいるのは、やはりヨハネであると考えられるという。
そして、この解釈だと、洗礼者ヨハネが、祝福を与える者として、イエスよりも上位に描かれた事になるのだ。
もう誰が誰だか分からないんですが。
まあ、聞きたまえ。
ここで、ロンドン・ナショナル・ギャラリー版に目を向けてみよう。
先に描かれたルーヴル美術館版とは違い、異端的な要素が全て排除され、光臨があり、2人の幼子は明確に区別され、左の幼子に葦の十字架と羊の衣が描かれている為、明らかに洗礼者ヨハネとなっている。
しかし、この葦の十字架と羊の衣は、イエスとヨハネ両者の混同を避ける為に、後になって植物のエスキース(下絵)から類推して、描き加えられたものだと言われている。
また、マリアの左手は幼子の頭上に掲げられているが、威嚇の様子は無いし、ウリエルも指を差しておらず、目もそらしていない。
これは、依頼主の信心会の怒りを静める為に、ダ・ヴィンチが型通りに描いた手抜きの『岩窟の聖母』なのである。
その一方で、ルーヴル美術館版の『岩窟の聖母』は、巧みに象徴を用いて、過剰なまでに挑発的なメッセージを、暗号として示していると考えられるのだ。
それ即ち、洗礼者ヨハネがイエスよりも上位にあるという事を。
神への冒涜と取られるその思想は、直接的に表現すれば教会に弾圧されるから、こっそり作品内にその意味を隠したという訳だ。
どっちが上位だっていいじゃない。
オトナって、いろいろめんどくさいんですネ。
そもそもダ・ヴィンチは、キリスト教信仰の主流とは対極をなす、神秘思想に傾倒していたそうで、その生き方と信条には、儀式や魔術といったものの影響が見られる。
「オカルト」とは"隠された"という意味であるが、当時のヨーロッパは、教会が科学実験を許さず、その探求の対象は文字通り隠され、伝統に反した独自の見解を示す者を異端とし、激しく押さえつけていたのである。
だが、ダ・ヴィンチが生まれ育ったフィレンツェはそうではなく、新しい知識が集まるこの地では、魔術師や秘術師といったオカルティストの避難場所で、また、当時フィレンツェの統治者であり、ダ・ヴィンチの最初のパトロンとなったメディチ家が、オカルト研究を積極的に奨励し、資金援助を行ったりしていたそうだ。
さて、ダ・ヴィンチは、フィレンツェにいた時代、自分で題材を決められる場合は、進んでヨハネを選んでいたという。
そればかりか、伝統的な宗教画を描く際も、ヨハネの存在を際立たせていたという。
洗礼者であり、イエスの血縁者でもあるヨハネはもともと重要な人物であるが、ダ・ヴィンチは他者とは異なり、ヨハネをイエスよりも上位の存在であると見なし、祝福を与えるのは、イエスではなく、ヨハネであると大天使ウリエルに訴えさせたと考えられるのだ。
まるで、まっすぐ伸びた右手の人差し指が、そう脅しつけているかの様に。
つまり、ダ・ヴィンチはこの作品で、無言の反キリスト運動を行ったのではないかと推察出来る訳だ。
なかなか陰険な人だったんですね、ダ・ヴィンチって。
ところで、この『岩窟の聖母』には、従来のものとは異なり、最近になって唱えられたある解釈の一例がある。
あくまで単なる仮説に過ぎず、妄想とも受け取られる様ではあるが、この様な解釈も面白いので、細かい事は気にせず紹介しよう。
『岩窟の聖母』の原題である「The Virigin of the Rocks」の「Rocks(岩)」とは、俗語で「睾丸」を意味するが、そう考えると、聖家族の後方に岩がある理由が別物になってくるのだという。
つまり、聖母マリアの頭のすぐ脇には堂々とした睾丸があり、そこから絵画の上部にまで、男根が聳え立っているのだ。
だまし絵の様に岩の塊に紛れ込ませてあるが、見分けがつくし、しかも一番上には、しぶき状の雑草まで生えている。
これは見る人の思い込みの強さにもよるが、特にロンドン・ナショナル・ギャラリー版でそれを伺えられる。
ダ・ヴィンチがわざわざこの男性器を描いたのは、絵の依頼主であった無原罪の御宿り信心会への腹いせであり、聖母マリアが処女ではないと訴えていると考えられるという。ほら、目を凝らしてよく見てみたまえ。
君にも見えてこないかね?
想像を絶する巨大ペニスが。そう、巨大ぺ(以下略)
乙女に何説いてんだコラ。
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死神ベンツ
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謎の少年カスパール・ハウザー
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オルメカの巨石人頭像
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エゼキエルの幻視
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地獄の声が聞こえる穴
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