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[2006.06.21]

FILE136:謎の少年カスパール・ハウザー


Kaspar Hauser1828年5月26日、聖霊降臨の月曜で祝日だったその日の午後5時頃、バイエルン王国(現ドイツ)のニュールンベルグのウンシュリット広場には殆ど人がおらず、ある若い男性がヨロヨロと歩いていた。
年は17、8歳くらいで体格は普通、透き通る様な色白の顔は疲れ果て、服装はボロボロで、歩き方も生まれてからこれまで、まるで一度も歩いた事が無い様なぎこちないものだったんですね。
で、たまたま通りかかった、地元で靴屋を営むジョルゲ・アイヒマンは、広場の片隅にたたずむこの奇妙な少年を発見した。
ジョルゲは少年の靴から血が滲み出し、足に怪我を負っている事に気づき、状態を見ようと靴を脱がして足を眺めたところ、少年の足はまだ幼く、水ぶくれが沢山出来ていたそうなんですね。
また、少年の足は、これまで一度も足を曲げた事が無い様な、むしろ反対側にわずかに湾曲している様にすら見えたそうなんだ、うん。
ジョルゲは少年が差し出した封筒を手にとって眺めた。
それは、第六騎兵連隊、第四騎兵隊の隊長が宛名になっていたそうでなんですがね、ジョルゲがいろいろ質問しても、少年は何かに怯え、全く言葉を知らない様子で、ただ「ヴァイス・ニヒト(知らない)」と応答するだけだったそうなんですね。
不審に思ったジョルゲは、とりあえず少年を最寄りの番兵詰め所へ連れて行き、そこの当番の軍曹は、少年を第四騎兵隊長であるヴェセニッヒの所へ届けた。
しかし、そこでの少年の行動は彼等を困惑させるものでしてね、まるで初めて火を見たかの様に、蝋燭の火に触れて火傷してうめいたり、部屋の隅に置かれていた古時計を異常に恐がったりしたそうなんですよ。
また、少年は与えられたビールと肉を、どうしていいか分からない様子で見つめるばかりで、黒パンと水以外は一切口にしなかった。
それ以外の食べ物は、食べてもすぐ吐き戻してしまったそうなんですね。
彼等がいろいろ質問しても、少年は相変わらず「ヴァイス・ニヒト(知らない)」の一点張りで、仕方なくジョルゲ達は手紙を調べる事にした。
ところが、その手紙はさらに彼等を困惑させるものだったんですね。
少年が持っていた封筒には、2通の書状が入っていたそうでしてね、その内容はこんなものだったんだなあ。

1通目:「御隊長殿へ。閣下の陸軍を志望する若者を貴殿にお届けいたします。この子は1812年10月7日に小生の元に連れられてきた者です。この子の母親が私に託してきたのですが、小生は貧乏な職工で子沢山なので、育てられる余裕がありません。また、私はこの子を一度も家の外に出した事がありません。」

2通目:「この子の洗礼は済ませてあります。名前はカスパールです。姓は貴殿がお与え下さい。父親は騎兵でした。この子が17歳になりましたら、ニュールンベルグの第六騎兵連隊へ参加させて下さい。父親が勤めていた連隊です。この子が生まれたのは1812年4月30日です。父親は既に亡くなりました。」

これらの書状は恐らく、1通目は最近まで少年の世話をしていた人物、2通目が少年の実の親によって書かれた物と推測されましてね、 ヴェセニッヒが筆談でも出来ないもんかと、少年に紙と鉛筆を与えてみたところ、彼は何やら嬉しそうな様子で、「カスパール・ハウザー」と書いたそうなんですよ。以来、この奇妙な少年はそう呼ばれる様になったんですね。
可哀想な子の話だネ。
ちっとも憐れみの思いが感じられませんが・・・。
子供を捨てた割には、随分ワガママに注文してますよね、まったく。
Kaspar Hauserええ、要は育てられない子を心優しい他人の家に押し付けたって訳なんですがね、それだけにしちゃあ、おかしい事があるんだなあ。
例えばね、カスパールに靴をはかせたところ、すぐに足が血だらけになっちゃったそうなんだ。
どうやら、彼はこれまで靴を履いて生活した事が無い様で、異常に足が弱かったんですね。
また、身につけていた服はカカシから取ったものだったんですよ。
こんなカスパールを、人々は長い間、地下牢の様な場所に閉じ込められていたんじゃないかって噂する様になった。
で、しばらくの間、カスパールは犯罪者を収容する警察の小さな塔の中で暮らす事になった。
部屋には小さな窓があった為、その窓の下には、話題となった少年を見ようと、大勢の見物客が訪れた。
しかしカスパールは、そんな見物客を気にも留めず、部屋の中で殆ど動かず、何時間もじっと座っていたそうなんですよ。
また、カスパールの感覚は過敏で、コーヒーかビールが室内に入ると嘔吐し、ワインの匂いがすると酔っぱらった様になったそうなんだ。
でもって、それからもカスパールの元に次々と学者や著名人が訪れたんですがね、中でもダウマー教授ってのが毎日の様に来たそうで、カスパールにいろいろ物事を教えて、交流したそうなんだ。
また、当時の市長と市議会もカスパールを庇護下に置き、税金の中から彼の生活費を捻出するという特別処置を取る事にしたそうなんですね。
こうした周囲の支えもあり、カスパールが現れてから数ヶ月が過ぎた頃、彼は別人の様に成長したんですよ。知能はその年齢の人並みに達し、言葉を流暢に喋れる様になっていた。
その教養の吸収っぷりは、覚えるというよりは、昔知っていた事を思い出すかの様だったそうなんだ。
そんな様子もあり、この頃から、カスパールの外見が当時の貴族であったバーデン公に非常に似ていた為、彼は元々、高貴な人物の血を受け継いでいるのではないかという噂が人々の間で囁かれ出したんですよ。
中川家のお兄ちゃんに似てない?
似てませ・・・ん!?あー、言われてみれば確かにちょっと・・・。
貴族にしてはビンボっちい雰囲気ですが・・・。
Kaspar Hauser
で、知能が人並になったカスパールは、周囲の勧めもあり、回顧録を書く事にしたんですよ。
彼が記した文章は、幼さがありながらも、覚え立てとも思えない様なものでしてね。
その内容によれば、カスパールは16歳で外に出るまでは、奥行き2m、幅1mで、立ち上がる事が出来ない程に天井が低く、窓が無い部屋で暮らしていたそうなんだ。
彼はそこを「オリ」と呼んでいたそうでしてね、床は汚くて、寝床には干し草だけつまれてたそうなんですね。
また、カスパールが毎朝起きると、決まって床にパンと水が置かれていたそうなんですがね、彼はそれが誰かが持ってきたのではなく、自然な事だと思ってたそうなんだ。
まあ、生まれてから人生の大半を、外部から完全に隔離された四角い部屋で過ごしていた訳ですから、そりゃ無理も無いでしょうね。
また、カスパールは時々、水が苦く感じる事があったそうでしてね、その後はいつも深い眠りについたらしいんですよ。多分そりゃ睡眠薬か何かだったんでしょうね。
で、次に目を覚ますと、髪の毛や爪、衣服が綺麗にされてたそうなんだ、うん。
そいで、ある日、カスパールの部屋に突然男が現れたそうでね、「知らない」と「軍隊」という2つの言葉に、「カスパール・ハウザー」という名の書き方を教えたそうなんですよ。
その後、カスパールは馬に乗せられ、ニュールンベルクの公園へ連れてかれ、封筒を渡されて置き去りにされ、彷徨ってたところを、ジョルゲに発見されたってな訳だったんですね。
引きこもりのチャンプじゃな。
十数年間も汚くて狭っくるしい、しかもテレビも漫画もインターネットも無い部屋で過ごすだなんて・・・。
現在進行形で引きこもりの皆も、上には上がいるから安心してね!
安心させんなッ!
一躍有名人になったカスパールは、多くの貴族達に興味を示され、その愛らしいながらも謎めいた存在感が人気を呼び、様々な社交場に呼ばれる様になった。
一部の者達は彼の事を悪魔の落とし子として恐れてたそうですがね。
また、市ではカスパールの出生の謎を明らかにする為に、懸賞金を懸けて情報を募ったそうでしてね、カスパール自身の話では、彼がニュールンベルクに連れて来られるまでいた場所は、およそ馬で1日という距離だった為、彼が閉じ込められていた地下室が町の近くにあると推測され、手がかりを頼りに様々な場所が探されたんですがね、結局その地下室と思われる場所は見つからなかったんですね。
で、それから間もなく、カスパールが塔を出て市民として暮らす事になると、かねてより彼の磁力や金属に対する能力に興味を持っていたダウマー教授ってのが、カスパールの里親として名乗りをあげた。
しかしその頃から再び、カスパールの容姿が貴族バーデン公にそっくりな事から、カスパールは元々王室の血筋だったが、何らかの理由で地下室に幽閉されたんじゃないかってな噂がされだしたそうなんだ。
それを裏付けるかの如く、実際、カスパールが生まれた頃に、王室で子供が2人いなくなるってな騒ぎがあったそうなんですよ。
まさかの『みにくいアヒルの子』的展開じゃな。
まあ、白鳥かどうかは定かじゃないですけどね。
噂の通りだとしたら、どうして幽閉されちゃったんでしょうね?
そんなこんなで、カスパールはダウマーの元で、生涯で最も幸せな日々を送っていたんですがね、それも長くは続かず、悲劇は突然起こった。
1829年10月17日、ダウマーの家で、カスパールが衣服を引き裂かれて、頭から血を流して倒れている姿で発見されたんですよ。
何とか生きていたカスパールによれば、急に絹の覆面をつけた男が現れ、棍棒かナイフの様なもので殴られたってな事だったそうなんだ。
警察はカスパールを特別態勢で警護し、直ちにニュールンベルグ中を捜索したそうなんですがね、彼の証言に一致する人物は見つからなかったんですね。
その後しばらくして、イギリスのスタンホープ卿ってのが、王室の末裔であるという噂のカスパールの事を気に入りましてね、彼と一緒に暮らす様になった。
でも、その頃からカスパールはワガママに振舞う様になってたそうでしてね、すぐに嫌気がさしたスタンホープは、カスパールを友人のメイヤー博士の元に厄介払いしたんですよ。
メイヤーの家は、ニュールンベルクから遠く離れたアンスバッハという町にあり、ヒッケルという護衛がつけられたそうなんですがね、カスパールは彼等との生活を激しく嫌がっていたそうです。
Kaspar Hauser
そして、1833年12月14日、雪の降る午後、カスパールはホーフガルデン公園で、またも謎の人物に襲われ、多量に血を流して倒れているところを発見された。
駆けつけてきたヒッケルに対し、カスパールは喘ぎながら途切れ途切れにこう言った。

「男が刺した・・・・・ナイフ・・・・・公園・・・・・財布を・・・早く行って・・・」

呼ばれて来た医者がカスパールを手当てしたところ、脇腹のあばら骨のすぐ下を刺され、傷は肺と肝臓に達していたそうです。
また、ヒッケルはカスパールが刺された場所で、鏡に映して見る逆書きのメッセージが書かれた絹製の財布を見つけたそうでしてね、それはこんな内容だった。

「ハウザーは俺がどんな顔で、何処から来たのか、誰なのか知っているはずだ。それとも、奴が言う前に俺が誰だか教えてやろうか。俺はバヴァリア国境の、河の側から来た者だ。俺の名はM・L・Oだ。」

どうやらですね、カスパールは誰だか知らない黒づくめの男に公園に呼び出され、財布を渡され、それを受け取った瞬間に刺されて逃げられたってな事らしいんですよ。
でもね、おかしいんだ。雪が積もる公園には1人分の足跡しか残ってなかったんですよ。カスパールのだけ。
だから、カスパールは既に失いかけていた周囲の注目を再び自分に浴びせる為に、自分で自分を傷つけ、最初の暗殺未遂も含めて、事件をでっちあげたんじゃないかってな推測がされる様になった。
そいで、カスパールは軽く自分を刺すつもりが、誤って深く刺し過ぎてしまったんじゃないかってね。結局その3日後、12月17日にカスパールはこの世を去った。
享年21歳の最後の言葉は「自分でやったんじゃない。」だったそうです。
「M・L・O」・・・・・、もの凄い・ロリコン・オヤジ・・・?
んな訳あるかいッ!
つまり、19世紀のピアノマンだったって事なんでしょうかね。
カスパールの死後、その出生の謎を探る様々な書物が出版されたんですがね、やはり有力な説としては、バイエルン王国から程近いバーデン大公国のカール大公の第一王子であるってなものです。
当時のカール大公は妻を失い、別の后を迎えていたそうで、この后が自分の子を後継ぎにする為に第一王子を幽閉し、頃合を見計らって釈放したが、カスパールが徐々に知識を身に付け、正体がバレそうになったので殺害したという。
その説を裏付けるかの様に、カスパールの死後、彼の世話に当たっていたニュールンベルクの市長や医師達が、まるで口封じにでもあったかの様に、次々と原因不明の死を遂げているそうなんですよ。謎の少年カスパール・ハウザー、彼は果して何者だったんでしょうか。
その正体は、未だに謎のままです。
Back number
FILE137:
死神ベンツ
FILE136:
謎の少年カスパール・ハウザー
FILE135:
オルメカの巨石人頭像
FILE134:
エゼキエルの幻視
FILE133:
地獄の声が聞こえる穴
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