ヤ=テ=ベオ(Ya-te-veo)という食人木▲
J. W. ビューエルによる『Land and Sea』(1887年) の挿絵。
中央アメリカと南アメリカの一部に生息すると言われ、
名前の意味はスペイン語で「私は既にあなたを見ている」。
短く太い幹を持ち、長いツルで獲物を捕らえ、
基本的には大型の昆虫を捕食するが、時には人間も襲うとされている。
ファンタジー要素のあるフィクション作品などでは、
しばしば意思を持って襲い掛かってくる植物が登場しますが、
かつて今ほど科学が発達していなかった時代には、
現実にそういった恐怖のモンスターがジャングルの奥地に実在すると考えられていたそうなんです。
それは「食人木(Man-eating tree)」といって、読んで字の如く、人間や動物を捕まえて食い殺す伝説上の人食い植物の事らしく、
「マダガスカルのデビル・ツリー」というのが最も知られた古い報告例だそうです。
1881年のアメリカとオーストラリアの新聞『New York World』紙及び『South Australian Register』紙の記事によると、
1878年、ドイツ人探検家の自称カール・リッヒェさんが、
マダガスカルの「ムコド」という部族によって行なわれていた神への生贄の儀式(人身御供)に遭遇したそうなんですけど、
その際に“飢えた緑色の大蛇のように蠢く細いツルで、生贄の村の女性の体にグルグルと絡みつき、
彼女の悲鳴と悪魔のような恐ろしい笑い声とともに締め付け、残酷な力を持って女性を折り畳んで獲物にした”という感じのエグい表現で描写された食人木を目撃したそうです。
また、ツリー自体は高さ2.5mくらいで、全体的にパイナップルを思わせる外観をしており、
催眠効果のある毒液などを有していたとの事です。
その後、この忌まわしいマダガスカルの食人木の話については、
1924年に元ミシガン州知事のチェイス・オズボーンさんが現地取材を行い、
マダガスカルの部族と宣教師に話を聞いて書いた『Madagascar, Land of the Man-eating Tree』という著作により知れ渡ったそうです。
しかし、1955年に科学ライターのウィリー・レイさんが著書『Salamanders and other Wonders』において、そもそもカール・リッヒェという人物自体が存在せず、これらの話は全て捏造だったと結論付けているらしく、今日では単なるデマとみなされているようです。