松栄堂
～フィギュアだらけの奇跡の健康パン屋～

最後の晩餐でイエス・キリストが「これは私の体である」と言い、弟子達に分け与えたとされるパンは、 キリスト教で霊的な糧「聖体」と見做され、それに関する奇跡も世界各地で報告されている。

ランチアーノの聖体▲

聖書では、パンに続いてキリストが「これは私の血である」と手にするワインが「聖血」とされる。
その為、教派により多少捉え方は異なるが、カトリックなどの礼拝でパン（聖体）とワイン（聖血）はキリストの肉と血に変化すると信じられ、 これを「聖変化」と呼ぶ。
この奇跡で比較的有名なのは、西暦700年にイタリアのランチアーノで起こった聖変化で、 ある日、司祭がミサで両手に掲げたパンが肉片に変わり、ワインが血液に変わったとされる。
現在も聖体と聖血がサン・フランチェスコ教会で保管されており、 1970年の科学調査では、いずれも人間のものに間違いないと結論付けられたのである。

こうした宗教とは無関係だが、まるで神の奇跡を思わせる“健康パン”を作る店がある。 山梨県甲府市で営業するパン屋「松栄堂」だ。

ここの名物は米ぬかで独自開発した栄養満点の「壮快パン」（※2）。
説明によると、精米の過程で生じる米ぬかは三割が食物繊維で構成され、鉄分やビタミンが白米の何倍も含まれており、 腸内を綺麗にして排便を促し、腐敗菌や発がん性物質の発生を抑える作用があるという。

同店の米ぬかは通常よりマグネシウムが高く、便秘やダイエット、美白、花粉症、糖尿病、さらにはガンにも効果があり（※3）、 病院からの紹介で来店する客がいる程だという。
本当だとすれば医学の常識を覆す大発明だが、少なくとも世界11か国で特許を取得しているらしい。

敷地内には、パンの効果を宣伝する看板が多数掲示され、アフィブログ的な怪しさを放つが・・・

中でも極めつけなのが、安倍総理（2018年当時）の写真パネル。
「健康維持のためスーパー米ぬかパンを食べ始めました」「めざせ一億人の健康パワーでGDP世界2位を」と書かれており、 胡散臭い印象に拍車をかけるが、別にギャグとかではなく、以前この店が米ぬかパンを献上したらしい。

最も目を引くのは建物の入口付近。
何やら露骨のゴチャゴチャしており、パンの匂いとは異なる香ばしい雰囲気が漂う。

健康は創作意欲をもたらすという事か、店主・興石征夫氏が趣味で制作した“フィギュアだらけの大型ジオラマ”が設置されているのだ。

火山が噴火する恐竜の大地。

帆船が浮かぶビーチリゾート。

木の上の空中ドールハウス。

陸・海・空ゾーンで区分けされた、アニメキャラや動物の人形が混在する不思議な世界が広がっている。

どうやら、米ぬかパンを食べ続けた後に訪れるユートピアを表現しているようだ。

店内に入ると、中央にやはりフィギュアだらけの祠がある。

扉を開けて中を覗くと、ピンク照明のベッドでフィギュア同士イチャついている隠し要素が。

総理からのお礼のメッセージも飾られていた。
持病の悪化で2020年に総理を辞任した安倍氏だが、この店の米ぬかパンを食べる事で、それまでどうにか持ちこたえていたのかもしれない（知らんけど）。

左側に壮快パンパワーの証として、毎日パンを食べて元気な興石氏が、65歳で登頂した雪山写真や登山道具が展示されている。

米ぬかパン誕生のきっかけは、興石氏の母親が病に倒れた際、薬の副作用で苦しむ様子を見て、 健康に良いものを食べさせたいと考え、産業廃棄物となっていた米ぬかに着目。

20年に渡る研究の末、ぬかをコーティングする事で臭みを抑え、栄養分を残したままおいしく食べられるパンが完成したという。
家族への愛情が生んだ素晴らしいパンなのである。

買う前からお腹一杯になるくらい見所が多いが、右側に並ぶ壮快パンは健康云々を抜きにしても美味なので、食べてみる価値ありだ。

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