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チェコの南ボヘミア州にある「チェスキー・クルムロフ」は、
メルヘンな景色が豊富な同国内でも、特に中世の面影を色濃く残した人気の観光地で、“世界一美しい街”と呼ばれている。
そんな死ぬまでに行きたいこの街には、幽霊や吸血鬼などの死んでても生きたい“アンデッド”にまつわる、不気味な伝説が残されているのである。
“オカルトアート”を巡る旅も、いよいよ今回で一区切り――。
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■前回までの「ヨーロッパ・オカルトアート紀行」
・①~魔法の都の怪奇の館(ホラーダンジョン)~
・②~不気味で美しい骸骨教会(ボーン・レガシー)~
・③~世界で最も恐ろしい教会(ゴースト・イン・ザ・チェコ)~
・④~カオスが牙を剥くドイツの狂竜公園(マッド・ジュラシックパーク)~
・⑤~呪われた死神ベンツ(デス・カーズ)~
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チェスキー・クルムロフ |
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オーストリアの古都ザルツブルグからバスで移動する事数時間、国境にも程近いチェコのチェスキー・クルムロフに到着。 街の中央に位置するスヴォルノスティ広場に降ろされた。
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可愛いらしい雰囲気で、かなりいい感じの街じゃない。 |
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ショーウインドーを覗くと、
いきなりハリーポッターがいたりして、同地のファンタジー度の高さが伺えた。
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この小さな街は、チェスキーが「ボヘミアの」、クルムロフが「川の湾曲部の湿地帯」を意味する通り、
ヴルタヴァ(モルダウ)川沿いのS字カーブに位置している。
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また、ボヘミアの深い森に囲まれ、中世のまま時が止まったかのような風情が漂う歴史地区である事から、別名「眠れる森の美女」とも呼ばれている。
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高台には、街のシンボルであるチェスキー・クルムロフ城が聳える。 プラハ城に次いでチェコで2番目に大きい建物で、城内にはバロック様式の宮廷劇場や庭園がある。
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街と城の建設は13世紀後半に始まり、
1302年にボヘミアの有力貴族であったローゼンベルク家の支配下となってから、河川貿易や手工業などで発展した。
やがてローゼンベルク家が財政破綻すると、
1601年に神聖ローマ帝国のルドルフ2世に売られ、三十年戦争で貢献したエッゲンベルク家に下賜されたものの、
1719年に断絶となった為、最終的に有力貴族のシュワルツェンベルク家のものとなった。
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街は元々ゴシック様式で造られたが、領主が変わる度に増改築され、
16世紀にはルネサンスやバロック、ロココなど、様々な建築様式が混在する、現在の華やかな街並みが形成された。
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しかし19世紀以降は、主要な鉄道路線からスルーされるなど、産業革命の波に取り残され、街は次第に衰退。
20世紀になると、ドイツ系住民とチェコ系住民の対立や、
ナチス・ドイツの支配、共産党の独裁体制の影響ですっかり荒廃し、一時は無人になる程の死の街と化した。
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ただ、結果的には近代化を免れた事で、中世の姿が保たれた。
プラハの春が訪れた1960年代以降は、徐々にその歴史的価値が見直され、
建造物の修復などを経て、かつての美しさを取り戻し、1992年にはユネスコの世界遺産に登録された。
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坂を登り、正門から城の敷地内へ。
ここで我々は、ある意外な存在を目にする事となる。
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なんと、城のお堀にクマがいるではないか。
言い伝えでは昔、城主が森で遭遇して追いかけてきた熊が、
城の堀にあった吊橋から落ち、そのまま住み着いたとされているとか。
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もっとこう、読者にとって有益な情報は出てこないんですか? |
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実際は元城主のローゼンべルク家が、
イタリアの名門貴族オルシーニ家との親戚関係を示す存在として、代々熊を飼育しているようだ。
何故なら、オルシーニ家の名は「オルソ(熊)」が由来で、紋章に3頭の熊が描かれているからだ。
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ここに来て、ある違和感に気付いた。 城の外壁や装飾が何だかおかしい。
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一見レンガ造りの立派な壁のようだったが、よく見ると絵で描かれているのだ。
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これはこの地方独特のスグラヴィータというもので、ルネッサンス時代に流行った立体的に見せる装飾様式らしい。
イタリア系の貴族であったローゼンベルク家は、この街を彫刻で溢れるイタリアの街のようにしたかったものの、
当時は財政難で苦しんでいた為、仕方なくこうした“だまし絵”を街中に施したのである。
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カラフルな配色の「フラデークの塔」。
その名は「小さな城」を意味し、城で最も古い13世紀の建物である。
これも当初はゴシック様式だったそうだが、16世紀にルネサンス様式に改築されたという。
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ちゃっかり古くさい感じにダメージ加工されてますね。 |
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入場料を支払って塔の内部へ。
入ってすぐの部屋には、昔のクルムロフ城の模型があった。
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こちらは塔の中ほどにあった鐘楼付近の模型。
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街を一望する塔の上からの眺め。 まるでおとぎの国に迷い込んだような感覚に陥る。
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こんな感じの街が土砂崩れとかで陸の孤島になったら、かなりサスペンス映えしそうじゃな。 |
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そこに脱獄犯やサイコパスが紛れ込んで、住人達が疑心暗鬼に陥る展開になると尚良しですね。 |
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よくこの美しい景色を前にして、そんな薄汚れたマニアックな発言が出てくるわね。 |
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さて、このままではただの観光記事になってしまうので、
そろそろオカルト情報をぶっ込んでいきたいと思う。
と言うのも、実はこのクルムロフ城には、チェコで最も有名な幽霊“ホワイト・レディー(白い貴婦人)”が出るといわれているのだ(チェコ語では「ビーラーパニー」)。
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彼女の正体は、15世紀に城に住んでいたローゼンベルク家オルドリッチ二世の娘ペルチタ(1429年~1476年)。
ペルチタは美しく知的な女性だったが、20歳になった1449年、
リヒテンシュタイン家のジョンという貴族と政略結婚させられると、
その夫の虐待により幸薄い暮らしを送る羽目になる。
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1473年、ジョンは死に際になって、ようやくペルチタに今までの酷い仕打ちの許しを請うも、彼女は断固としてこれを拒否。
すると逆ギレした残忍なDV夫は、
「お前は死んでも天国には行かせない!永遠に城の周りを彷徨う幽霊になれ!」と、ペルチタを呪って息を引き取ったのである。
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そして、理不尽な呪いの通り、ペルチタは1476年に47歳で亡くなってからも、
雨がしとしと降る晩になると、白いドレス姿で現れるようになったという。
この城は夜間はライトアップされ、中庭までは入る事が出来る為、散歩に訪れた人などによって、
窓からジッと見下ろされたという目撃報告があるらしい。
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ところで、この霊はいつも手袋をしているらしく、
その色によって吉凶を予兆するという、占いみたいな要素があるようだ。
白い手袋ならば、結婚や出産などのおめでたい事がある知らせで、
一方、黒い手袋の時は、死や病気などが訪れる不幸の知らせらしい(赤い手袋の場合は火事とも)。
ちなみに、最後に黒い手袋をした彼女が現れたのは、1938年のナチス侵攻の直前だったとか。
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なお、城内にはホワイト・レディーの絵画が飾られている。
伝説によれば、彼女の足元に描かれた神秘的な碑文の意味を解読出来れば、
彼女の魂は救われ、謎を解いた者への報酬として、宝物の在り処が示されるといわれている。
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城の中央は吹き抜けになっており、反対側に通り抜けられる通路が続いている。
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城内の見学ツアーもあったのだが、残念ながらこれは撮影禁止であった。
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城と庭園を繋ぐプラスティー橋を抜けていくと・・・
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改めて、街を一望する絶好のビューポイントに到着。 観光ガイドや絵葉書などで使用される定番の構図である。
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チェスキー・クルムロフは首都プラハから約170km、車や列車で3~4時間程の距離である為、
日帰りの旅先としても人気が高いようだが、それも頷ける素晴らしい景勝であった。
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インサート用の素材に色々なアングルでしつこく撮影しておくぞい。 |
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雨待ちで結構待機させられましたが、やはり日が差した方がオレンジの屋根が映えてより綺麗ですね。
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アンタ達、せっかく現地に来てるのに、カメラ越しばっかで見てたらもったいないわよ。 |
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マストとしていた風景も抑えたので、クルムロフ城を後にし、再び城下町へ降りる。
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最初は気付かなかったが、改めて意識して見回すと、街のあちこちの壁がだまし絵仕様になっている。
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巧みなバランスでペイント中の職人の姿も。
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前述のとおりアートの街でもある同地には、
一見して何屋なのかよく分からない、アトリエ兼ショップなども見かけられた。
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外に出ない限りモンスターなぞエンカウントしそうにない平和な雰囲気だが、
ホワイト・レディーの他にもう一つ、チェスキー・クルムロフには不気味な伝説が残されている。
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福を呼びたいのか、どうしたいのか分かりませんね・・・。 |
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