> 魔界冒険記 > 飛びだせ!魔界ウォーカー > Article


[2017.02.20]

ヨーロッパ・オカルトアート紀行③
~世界で最も恐ろしい教会(ゴースト・イン・ザ・チェコ)~



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

チェコの片田舎にあるルコヴァ村には、“世界で最も恐ろしい教会”が存在するという。
本来、何処よりも安全であるはずの聖なる神の家が、一体何故そのような事になっているのだろうか?
旅の拠点である首都プラハからはいささか遠かったが、 オカルトサイト的にはスルー不可避の内容であった為、我々は決死の覚悟で同地の潜入を試みた。


今回の物件、まず所在地の特定に苦労した。
と言うのも、日本では2015年末頃にバイラルメディアの翻訳記事などで簡単に紹介されたが、それ以外の情報は乏しく、 ソースとなったページや他の海外サイトにも詳しいアドレスが記されていなかった。


唯一の手がかりである村の名「ルコヴァ」を地図上で検索すると、いくつも似たような地名が出てきた為、 片っ端から衛生写真で周辺のそれらしき建物を探し、ようやく“可能性が高い場所”を見つけ出した。

トンデモない田舎に来ちまったな。

どうするんですか、取り返しがつかないくらいのどかな雰囲気じゃないですか・・・。

こんなに遠いなんて聞いてないっちゅーのよ・・・。


つまり、この最寄の無人駅に降り立った時点では、正直「多分あそこっぽいけど違うかもしれない」みたいな微妙な気持ちであった。
貴重な海外視察の1日を棒に振るかもしれないという不安がよぎる。

もし場所が間違ってたらドンマイ!夕飯にチャーハン奢るわ!

いやいや、ここまで来てそりゃ無いでしょう!
そしてヨーロッパまで来てチャーハン食いたくねえよ!

完璧に正確に特定しとかんかいッ、このアホンダラ!


駅前の通りに一応建物はあったが、 まるで人の気配が感じられない古びた工場か何かで、果たして現役なのか怪しいところだ。
時折、外壁が風できしむ音が、「ヴーン」とアポカリプティック・サウンドの如く不気味に鳴り響き、我々の不安さを増幅させた。

うわあ・・・。

うわあ・・・。

うわあ・・・。


来た事を本格的に後悔させるカントリーロードをひたすら歩く。
グーグル先生のナビによると、目的地の教会は駅から徒歩1時間半ほどの距離である。 しかし、我々は進まなければならない。
何故なら、プラハからここに来るまで既に5時間かかっているからだ。

なあに、片道たったの7kmくらいじゃ・・・!

往復だと14kmじゃねーかクソが!
山手線沿いだったら新宿駅から浜松町駅まで行けますからね!?

帰宅難民じゃあるまいし、現代っ子が歩いて行こうとする距離じゃないだろバカが!


道すがら何軒も多少気になる廃墟を見かけたが、 いちいち構ってる余裕は無い。
何故なら、プラハまでの帰りのバスの予約時間に間に合うよう、ベストタイムを出さなければならないからだ。

あー、あー、あー・・・くっ!

いちいち気にして葛藤しないでください。

なに断腸の思いで未練を断ち切ってるのよ。


やがて途中にあった集落を過ぎると、 いよいよ道が未舗装の地面に変わった。

え、このルートほんとにあってんですか?

グーグル先生が導き出した最短ルートじゃぞ。
いつもサイトの記事を検索上位に出してくださるあのお方じゃぞ。

むしろ信憑性に疑問が生じるじゃないのヨ。


いかがだろう、このファイナルファンタジーで見た事があるような広大なフィールドは。

だんだんと笑いが込み上げてきたな・・・!

全然笑えねえですよ・・・!

この気持ちはむしろ怒りよ・・・!


草原の後は森を抜け・・・


再び草原を進む。
このサイクルを何度か繰り返し、我々は徐々に目的地に近づいていった。

しかし人っ子1人すれ違わねえな。
もっとこう、偶然通りがかった気のいい農家のおじさんとかに、トラクターの荷台で運んでもらう感じのビジョンだったんじゃがな。

すげえ甘い見通し立ててんじゃねーよ!
何だよ気のいい農家のおじさんって・・・。

こんなところでエンカウントするのはモンスターくらいなもんよ!
このボケが!


セントジョージ教会


いい加減ウンザリしながら森の小道を進んでいると、 ふいに木々の隙間から教会の鐘楼が見えた。

あった・・・目的地に着いたぞ・・・。

どうやらこの世に実在したようですね・・・。

達成感より疲労感が勝って素直に喜べないんだけど・・・。


思わず足早に駆け寄って建物を仰ぐ。
この外壁の朽ち果て感は、間違いなくネットの写真で見た場所そのものであった。


セントジョージ教会 (St George's Church)。
教会は小さな村を守護するように、裏手の高台にひっそりと建てられていた。

もうちょい曇天の方がおどろおどろしい雰囲気が出たんじゃがな。

フォトショで適当に修正すればいいですよ。

せっかく天気に恵まれたんだから贅沢言ってんじゃないわよ。


丘の下には、 最近まで地図検索してもろくにヒットしなかったルコヴァ村の家々が見える。
村と言うにもいささか物足りないくらいの疎らな数の民家だ。


さて、休憩もそこそこに、早速教会内部へ。
撤去や破壊などされていない事を祈りながら一歩足を踏み入れると、我々が期待していた異様な空間がそこには広がっていた。

おお、これは・・・!

いっぱいいますね・・・!

なんとまあ・・・!


白いフードの幽霊達がズラッと列席。
まるで死者の安息を神に願うレクイエムのミサのようでもある。

オバケだらけじゃな・・・!999人くらいいるんじゃないか?

ホーンテッドマンションかよ。そんなにいないでしょ。

こりゃ何も知らずに迷い込んだらトラウマものですね・・・。


1352年に建てられたこの教会は、元々地元で「9人の幽霊教会」と呼ばれていた。


これは第二次世界大戦以前、ドイツ人の幽霊が毎週日曜になると祈りに現れたという話に由来するという。
つまり、実際に心霊スポット的な歴史背景を持つ場所でもあるのだ。

どう見てもオカルトアートです、本当にありがとうございました。

でも何でこんな場所にわざわざ幽霊なんか作ったんですかね。

ここの村人達はドMばっかなのかしら?


そして1968年、この教会で葬儀を行っている最中に、なんと屋根の一部が崩壊するという不吉なハプニングが起こる。
これにより人々は教会が呪われていると恐れ、以後誰も近づかなくなった。


こうして教会は廃墟と化し、半世紀近く放置されていたそうだが、2014年の夏になって、 地元の若手アーティストのヤクブ・ハドラヴァが立ち上がった。


西ボヘミア大学のデザイン・ファイン・アーツ部の美術学生である彼は、 教授から出された課題のインスタレーションアートの制作場所に、以前から知っていたこの教会を選んだ。


そして、教会の過去を人々に思い出させる為に、あえて白い石膏で作った幽霊の彫像を設置したのである。

教会というより恐会といった感じじゃな。

定期的にドヤ顔でしょうもない事言わないと死ぬんですか?

病気なのよ、そっとしておきましょう。


するとこの開き直りっぷりが功を奏したのか、ネット上で幽霊教会として話題となり、欧米を中心に 世界各地から多くの観光客がこの教会を訪れるようになった。


ツルツルの石膏で作られた幽霊の像は、ヤクブ・ハドラヴァが仲間の学生にレインコートを着せて、 それぞれポーズを取らせて型を作成したという。

こんだけ白い奴がいるとKKKの秘密集会みてーじゃな。

それは別のベクトルで戦慄の光景ですね。

あいつらだってこんな田舎じゃ欠席者続出でしょうよ。


その哀愁に満ちた姿はまるで、次なる人生の機会を求めて祈っているかのようだ。


石膏の表面にはリンが塗りこまれ、日中に吸収した光が夜間になるとほんのり輝くという。ただ基本的に暗くなってからここに来たいとは誰も思うまい。


幽霊の質感は基本的にツルツルだが、 中にはきめ細やかな絹のローブを纏っているお洒落さんもいた。

シースルータイプの服か?

ただでさえ幽霊なのにどんだけ透け透けにしたいんですかね。

どっちかっつーとレースカーテンっぽい・・・。


よく見ると、2体の幽霊が寄り添うように座って一体化している感じの、リア充っぽいパターンもあった。

生の喜びを知りやがって・・・!

死んじまってますけどね・・・。

さすがにろくろは回してないみたいね。


こちらの左側の人に至っては、分かりにくいが実は子持ちのように見えなくもない。

いや、これ赤ちゃん生まれてねえか・・・?

そういや何か小さいの抱えてますよね・・・。

確かに代えのシーツって訳でもなさそうね・・・。


教会内部は老朽化が進んでいるが、 見たところ致命的なダメージは無く、頑張って補修すればまだ使えそうな、いい塩梅のボロボロ感だった。


正面の奥にはシンプルな祭壇がある。
左側には牧師が説教をする為の講壇があり、階段を上ると少し高い位置から教会内を眺める事が出きた。


訪れた沢山の観光客によって集まった寄付金は、 教会を修復するのに十分な額が集まりつつあるという。

おい待て、おかしいぞ。・・・1人多くないか?

そもそも全員幽霊だっつーの。

クソみたいな怪談センスというかギャグセンスね。


時間かけて来た割に、滞在時間は15分にも満たなかったが、 それでも満足のいく撮れ高となった。


ちなみにこの教会、普段いつでも開放されてる訳でなく、 実は事前予約制だった模様。
そんな重要事項も知らなかった我々だが、教会に着いた時にたまたま管理人のおじさんが作業していた為、 ラッキーな事に内部を見学する事が出来たのだった。

あっぶねー!セーフ!

いや、あわや大惨事ですよ!勘弁してくださいよ!

危険な橋を渡らせやがって!幽体離脱させてやろうかッ!?


教会の裏手に回ってみるとこんな感じ。
外壁の割には屋根が新しく見えるが、さすがに崩壊した部分などがあった為か、優先的に修繕されたようだ。


教会の長い歴史の中では、過去にも何度か戦乱や火事によって建物が破壊された事があったそうだが、 その度にしぶとく復興されてきたという(現在の建物は16世紀に再建されたもの)。
そして今回も、幽霊譚を活かすという逆転の発想による芸術作品が、この教会を改めて蘇らせようとしている。
何とも奇妙なリノベーションを目の当たりにし、お腹いっぱいになった我々は同地を後にした。


そんなこんなで、元来た道を再び1時間半かけて戻り、駅に帰ってきたのだが・・・。

ば、バカな・・・!
街方面の電車が2時間に1本しか来ない・・・だと・・・!?

どう計算しても帰りのバスの予約時間に間に合わないンゴゴゴ・・・!!

もう嫌、ほんと嫌、早くホテルに帰りたい・・・。

※その後、頑張って夜遅くにプラハまで辿り着きました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ人は、多分こんな記事も読んでいます。

Back number

Archives

News Headline

ページのトップへ戻る
inserted by FC2 system