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[2021.10.23]

三浦鏝絵美術館
~左官職人が描いた不思議な立体画~



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「鏝絵(こてえ)」とは、左官職人が壁を塗る鏝(こて)で描いた漆喰の浮き彫り細工の事で、言わば日本式の技法によるレリーフである。


腕利き職人が活躍した江戸時代以降に多く作られ、財を成した豪商などが富の象徴として、家や蔵の外壁に好んで装飾した(※1)。

※1:鏝絵の歴史は古く、高松塚古墳や法隆寺金堂の壁画も同じ技法と見なされている。
左官職人の親方から弟子へとその技法が代々伝授され、江戸末期から明治時代の名工「伊豆の長八」こと入江長八が芸術の域にまで昇華させた。
題材は基本的に招福厄除を願う縁起物や花鳥風月が中心で、着色された漆喰を用いて立体的に表現される。


戦後は職人の減少に伴い一時衰退したが、現在はその芸術的な価値が再評価され、各地に鏝絵に関する美術館が建てられている。
そうした施設の中でも異質なのが、福岡県大野城市の住宅街にある「三浦鏝絵美術館」だ。道端の自販機と並ぶ“昇り龍”の像が目印。


前方に鶴や松などの鏝絵が外壁についた怪しい一軒家があるが、そちらは左官職人で鏝絵作家の館長・三浦辰彦氏の住居。
普段は一般公開していないが、2019年の訪問時はご厚意により自宅に招待して頂いた。


この家も三浦氏が自ら建てた作品らしく、外壁のみならず内装にも個性が見受けられた。
居間は畳部屋にも関わらず、何故か暖炉風の装飾が施されていたが、 そこには結局普通の電気ストーブが置かれており、妙にツボだった。


また、居間の壁には巨大な夫婦獅子の鏝絵が描かれており、屋敷神のような存在感を放っていた。
これこそ、三浦氏が初めて手掛けた鏝絵作品らしい。


彼の私設美術館は隣のアパート内にある。
看板の開館時間は「年中無休、日の出から日の入りまで」となっていた。


ここは三浦氏が建設し経営するアパートで、明治時代の米蔵を改装した地下展示場がある。


入口の手前に謎のおじさん像が立っているが、これは昔の館長の姿を模したものらしい。
ケンタッキーのカーネルおじさん像を改造し、頭部を自身の顔に挿げ替えたようだ。






鏝絵で溢れた通路を進むと、メインのギャラリー兼アトリエに辿り着く。










広々とした空間に約200点の作品が並び、和菓子を思わせる淡色で精巧な鏝絵の造形美と、意外にメルヘンな雰囲気に驚かされる。






有名キャラを使うなど題材も自由らしく、何故かノーパン男と変な髪型の女(※2)の像が佇んでいて、珍スポたる所以を発揮している。

※2:これも漆喰彫刻で、題材はまさかの「初音ミク」(ノーパン男はミクの子分)。
以前は原作同様ツインテールだったようだが、パーツが取れて変な髪型になったようだ。
そういえば、愛知の「パブレスト100万ドル」でも同キャラのカラーを意識したペイントがなされていたが、 この手の高齢男性に刺さる魅力的な何かを放っているのだろうか。






だが、その芸術性の高さは世界的に認められており、海外数か国やルーヴル美術館に出展した作品が受賞した事もあるようだ。


「黄金の翼」大賞を受賞した作品『花は花は花は咲く』。
東日本大震災をイメージした内容で、スカイツリーや富士山などの日本を象徴する要素が描かれ、犠牲者達を鎮魂する願いが込められている。
作品の下の方には、被災者がお腹を空かせただろうからと、本物の小豆を貼り付けたようだが、ネズミに食べられて少し欠けている。


1階の通路の奥(建物の側面部)にも屋根や壁が増設された展示場がある。




その為アパートの住人達は、彼の作品に囲まれながら日常生活を送るという、世にも珍しい賃貸物件となっているようだ。

一番奥には、若き日の奥様の肖像画が展示されている。
「世界一良い女だ」と紹介する三浦氏の粋な姿が印象的だった。


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