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[2024.04.27]

世界唯一狸王国
~住宅街の驚き信楽タヌキ御殿~



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戦国時代、織田信長が今川義元を討ち取った「桶狭間の戦い」。
最近の大河ドラマ『どうする家康』では、この戦が初回に描かれた事で話題となったが、 当時、今川家に仕えていた徳川家康にとっても大きな転機であった。


愛知県豊明市には、そんな桶狭間の古戦場跡が残されており、凄惨な歴史を今に伝えている。


ひっそりとした竹林の斜面には、今川義元の仏式の墓碑(供養塔)が。
彼の300回忌に建立されたものだという。


ところで家康は、狡猾さから後年「タヌキ親父」とも揶揄されたそうだが、 この古戦場がある街には、奇しくも“タヌキだらけの家”が存在するのだ。


噂のその家は、閑静な住宅街の中に紛れ、言わば“奇襲”(※1)の如く建っていた。

※1:「桶狭間の戦い」と言えば、兵数の劣る織田軍が奇襲によって今川軍を破った、というイメージが強い。
しかし近年の研究では、奇襲ではなく、正攻法で勝利を得たとする説が有力のようだ。


朝焼けに照らされた家の外観は、まさにカオス。
無数の何かがゴテゴテと取り付けられ、まるで要塞のような印象である。


ブロック塀に近づくと、信楽焼のタヌキを主としたオブジェが、溢れんばかりにズラッと並んでいた。


土地の歴史を反映しているのか、甲冑姿の狸武者の姿も。
さながら“令和狸合戦”といったところか。


タヌキが纏う衣装の他、パイプを利用した祠や棚など、所々に手作り要素も見受けられる。



よく飲食店の入口に信楽焼の置物が佇んでいるように、「他を抜く」に通じるタヌキは、 江戸時代から商売繁盛などの縁起物として人気である。
しかしそれにしても、あまりにタヌキ愛が抜きん出た物件だ。



この“変な家”は、その名も「世界唯一狸王国」。
飲食店などではなく、あくまで一般の民家である。


どうやら、家のご主人のタヌキ好きが高じまくり、自宅を大胆に改造してしまったようだ。



今でこそすっかり名古屋のベッドタウンだが、ご主人がこの家を建てた50年前の頃は、周辺は畑だらけで、まだ僅かな住宅しかなかったそうだ。
当時タヌキが出ると言われたものの、ご主人は探しても出会えなかった為、 代わりに信楽焼のタヌキの置物を庭に飾ったのだとか。


すると、それを見た近所の小さな女の子が喜んだ為、以降ご主人はもっと子供らを笑顔にさせたいと、 約200体ものタヌキの置物を収集。
ついには王国となり、地元小学生の“待ち合わせスポット”や、ポケストップにまで変化(へんげ)したという。


こちらの信楽焼が「村長」らしいが、そんな事よりも、背後にいる影のフィクサーらしき存在が気になる。


鍋の中で「狸汁反対」と訴える自虐的なタヌキ。
オタマの角度に力強い反対の意思が感じられる。



「たぬき食堂」に「狸美容院」など、独特な世界観が展開。

「宴会は300匹まで 余興はカエル合唱 皮算用銀行のカードが使えます」といった表記など、 ご主人のこだわりが伺える小ネタも点在している。


この密度が最も濃い中央部は、「たぬき村」が基本コンセプトらしい。


「催し案内 ドロブネの反省会 場所 カチカチ山」

タヌキが纏う甲冑なども、ご主人が1つ1つ段ボールで手作りしたものらしい。


「役所だより シガラキ焼どうしの結婚は血族結婚となり禁じます 村長」

同種はダメでも、タコとくっつくのは良いのだろうか。


色々とツッコミたくなる要素はあるが、一番衝撃的なのが、この「生きてた狸」であろう。
剥製らしき代物が壁に取り付けられ、なんともグロい状態に。


「狸クイズ? 風もないのに 歩けば ゆれるものは なあに」
もちろん、答えはキン(ry



生垣には、小ぶりのタヌキが実るように飾られ、“タヌ木”といった感じになっていた。


2階の北側には、鎧兜の鍬形に顔が付いた謎のオブジェが、象徴的な感じで陣取っていた。
表面に豆電球らしきものがあるので、夜はピカピカと光る仕様なのだろうか。



「狸武者 発祥の里」という謎のアピールが記された看板。
余談だが、明治時代には“軍隊狸”なる都市伝説が巷で囁かれたそうだ。
人間に変身した狸が日露戦争に出征し、ロシア軍と戦って日本軍の勝利に貢献したというものだ。 桶狭間が近いので、狸武者もそんなイメージなのかもしれない。



そして、やはり目を引くのが、東側に建つ謎のタワー。
先端近くには「狸」と記され、怪電波でも放っていそうな印象だ。


屋根付近にも「狸」の文字がある他、何故か龍や鳥のような生物の姿も。
「狸王国」だからと言って、タヌキだけに捉われない柔軟性が伺える。



地域で長年愛されてきた狸王国だが、 2024年現在、建物の老朽化に伴うリフォーム工事中らしく、オブジェは一旦全て撤去されている模様。
今後は厳選したタヌキを配する事で、王国を存続させる予定だという。


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