「バンイップ(Bunyip)」とはオーストラリアの先住民族アボリジニに伝わる“水の精霊”を意味する謎の生物の事である。古来からニューサウスウェルズ州、クイーンズランド州の湖や河川を中心に目撃され、「ブニープ」、「キネプティ」、「ヤーフー」、「オイーオイー」等とも呼ばれ、病や災厄をもたらす悪魔・魔物的な存在として忌み嫌われているそうだ。
言い伝えによれば、バンイップは夜行性で、普段は水中や洞窟に隠れて人目を忍んでおり、大声を上げながら獲物を探しに徘徊し、動物どころか人間まで襲って食べると言われており、それも特に女性を好むそうだ。バンイップの姿は、目撃者によってバラバラで一貫性が無く、体長は1.5m位というものから大きいものでは5m位あったと実にまちまちだ。これは目撃者が皆食い殺される為、確実な姿が分からないとも言われている。 大体はブルドッグの様な顔をしたアザラシ型とされるが、獣人の様であったというものもあれば、人間と精霊を組み合わせた様であった、またはキリンの様な長い頸を持っていた、ゾウの様な長い鼻を持っていた、エミューに似ていた、ウロコ状の皮膚やヒレがあった、鋭い鉤爪をしていた、尻尾がとても長かった、翼を持っていた等々、情報が錯綜している。 目撃者によって姿形が千差万別なバンイップ▲アボリジニの壁画にもその姿が描かれているという。 2001年に作家ロバート・ホールデンが書いた著書『Bunyips』によれば、 少なくとも9つの地域でバンイップの姿のバリエーションが確認出来たという。 1911年には、日本の民俗学者・南方熊楠が柳田國男に宛てた河童に関する手紙の中で、オーストラリアの水怪「ブンイップ」として言及しており、牛くらいの大きさで黒灰色の羽があり、 一部はジュゴンの見間違いや、川を遡上してきたサメが正体の可能性を指摘している。 元々コイツは、あくまで特定の地方における伝説として語られた幻獣の様な存在らしいのだが、 新聞記事でその名が報じられてから、いつしかオーストラリアの湖沼に潜む水怪全般を指すものとして、人々に受け取られるようになった可能性もあるようだ。その所為か、近年になってもUMAとして、多種多様な姿で目撃が相次いでいるのだ。
ニューサウスウェルズ州ワーレンに住むセシリア・ロー夫人の目撃談も興味深い。 1977年8月のある夜、彼女はミネラルウォーターを飲みながら、自宅の側のマグワイヤ川の畔にいたところ、何やら生臭い香りが漂ってきたらしく、ふと、川岸の方を見ると、そこにはブルドッグの様な顔をした、柔毛に覆われたアザラシ型の巨体を持つ怪物がいたそうなのだ。そしてそいつは、川を泳ぎながら顔を覗かせ、「キー!キー!」とイルカに似た声を出して威嚇しながら水中に潜っていったという。ぶったまげたロー夫人は、すぐに警察に連絡したそうで、やがて駆けつけてきた警官は、現場で奇妙な足跡を発見した。 その翌晩にも、マクガイヤ川沿いの住人から、ワーレン署に謎の生物を目撃したという通報が相次ぎ、 今度は付近の草むらで、引き裂かれて惨殺された子羊の死体が発見された。 こうした一連の騒動は、バンイップによるものではないかと考えられたという。
1812年に『シドニー・ガゼット』紙がバンイップの存在を報じてから目撃証言が急増したそうで、特に1840年代から1900年頃までが最も多かったらしい。1821年11月には、バットサース湖でキャンプに訪れていたエドワード・S・ホール氏の前に、ブルドッグの様な顔を持つ、全身が黒い毛に覆われた体長1.5m程の生物が現れ、ヒレを使って泳いでいたという。ホール氏はその生物を銃で狙って発砲したそうだが、彼の腕が悪かったのか生物が凄かったのか、弾は全く当たらなかったそうだ。 また、1929年9月19日付けの新聞『レジスターニュースピクショナリー』紙には、 1880年代に南オーストラリア州クーパーズクリークの湖で、飼い犬がバンイップに襲われるという事件が発生したと報じられている。この時、犬は何者かによって湖に引きずり込まれ(ケガはしたが一命は取り留めた)、 飼い主は赤茶色の滑らかな皮膚の生物が泳ぎ去るのを目撃したという。 実に奇妙なバンイップ・スカル▲ また、1847年2月17日付の『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙によれば、1846年にニューサウスウェールズ州のマラームビッジ川の川岸にてバンイップのものと思われる頭蓋骨=通称「バンイップ・スカル」が発見されたらしく、シドニーのオーストラリア博物館に展示されたそうだ。 その骨は、大きな頭部に眼窩が一つのみ、下顎が著しく発達したという奇妙な形状で、 夜になると奇妙なうめき声が聞こえるといった証言も多数あったという。 しかし当時、この頭蓋骨を鑑定した自然科学者W.S.マクレイ博士ら数人の科学者は、子馬や巨大な鳥、若いラクダ、そして子牛などといった、既知動物の奇形のものである可能性が高いと指摘している。いずれにせよ、頭蓋骨は2日間だけ展示された後、何故だかより詳細な科学分析がなされる前に、行方不明になってしまったという。 ちなみに、シドニー郊外のブルー・マウンテンには、「スリー・シスターズの伝説」というものがあるらしい。 かつてこの地には、祈祷師を父親に持つ3人の美しい娘達が平和に暮らしていたが、ある時、バンイップに襲われた為、祈祷師が娘3人を岩に変えて隠し、 自分はコトドリに姿を変えて岩穴の中に逃げた。 しかし、祈祷師は元の人間に戻る事が出来なかった為、3人の姉妹も一生岩山のままになってしまったという悲しい話だ。 現地には娘達が変えられたものと言われる3つの岩山が実際に今も残っているそうだ。 また、バンイップの正体は、目撃が多発した19世紀当時はオーストラリアに移民が訪れて間もない時期であった為、未知の水陸両棲の動物を慌てて誤認したという可能性が指摘されているが、果たして・・・!? ・・・ん~ん、オーストラリアは広い!人間の目の届かないところで生きているものは数知れないだろう!中には神話の世界を抜け出して今も息を潜めている生物が存在するかもしれない!だからこそ、夢を求める冒険者達は未知なるものを目指す!例えそれが、見果てぬ夢であったとしても・・・!!
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