樹海の迷い方
～ひとりかくれんぼキャンプ（リメイク版）～

昔々ある所に、心霊スポット好きの若者グループがいました。
彼らは数多の曰くある土地を行脚しましたが、一向にお目当ての幽霊が現れる気配はありません。
トンネルや橋といった地味な画ズラや、深夜の廃墟という暗くて何だか分からない 撮れ高にもだんだんと飽きてきた頃、彼らは探索帰りのファミレスである事に閃きました。
「樹海に泊り込めば、霊出るんじゃね？」と。

という訳で今回は、あの頃から今年で早10周年という事を記念し、 “迷作”として主に身内から評価が高い企画「一人隠れんぼin樹海」の 過去記事に大幅な加筆修正を施したリメイク版をお送りします。

2007年6月、己らの明け方の変なテンションが招いた結果を呪いながら、我々は出発地の横浜駅前に集合した。

【参考】明け方の変なテンションのファミレス（3ヶ月前）

そんなこんなで荷物を積み終え、カッパ号（初代）に乗って、日本一の魔境・青木ヶ原樹海を目指す。

目的地が森の中という事で、 熊の存在を異常に恐れる逆本が持ってきたヒグマ対策マニュアル（ウェブページのプリントアウト）を車中で眺める。

そう、先程から我々の前方を走るトラックに熊がいるのだ。

一体この出来事は何を暗示しているのだろうか・・・？

急いでダイクマに寄って応急処置の為に道具を買う。

修理中のカッパ氏。
哀愁を漂わせる背中がいたたまれなくなり、つい少し距離を置いた。

ちなみにこの車、この1年後にはチュドってこんなんなりました。皆様も運転にはくれぐれもお気をつけください。（※関連記事）

その後、野を越え山を越え、渋滞に巻き込まれつつ、 下道で数時間移動。

午後8時過ぎ、ようやく樹海に到着。
遊歩道の入口がある風穴の駐車場にて。

さて、今回は樹海でただ一夜を過ごすだけではなく、 この頃から巷で話題となっていた禁断の遊び「一人隠れんぼ」を行い、 より霊に積極的にアプローチを試みる事とした。

今回運悪くスケープゴートに選ばれたのは、いまいち何の動物か分からない癒し系のこのぬいぐるみ。ご愁傷様です。

で、早速哀れにも惨殺され腸を綿を抜き取られる。

そして、内部に米粒を詰め込む。
まさかこのぬいぐるみも、こんなもんを己の体内に入れられる日が来ようとは想像もしていなかったろうに。

そんなこんなで、一人隠れんぼの主役である倫理的に問題なぬいぐるみの準備が出来た。

対熊用完全武装の逆本氏。
頭に鍋をかぶり、口には爆竹を咥え、手にはオタマと熊避けスプレーを持つ。

でもって、準備も整いレッツ樹海入り。

さすがに夜ともなると、一応整備されている遊歩道ですら進むのに結構勇気がいる。

夜の樹海にて、ブログでLIVE更新するニシナギ氏と、2chのオカ板で実況する源氏池のカッパ氏。
なんつーか、時代はモバイルですね。

適当なとこで遊歩道を外れ、いよいよ森の中へ。
一寸先は闇状態で、木の根が入り組み、地形の起伏が激しい為、何度も足を取られて躓いたり、盛大に転倒したりして、先に進むのには実に苦労を要しました。分かってはいた事だがかなり危ない。

コンパスもGPSも使わず、しばらく気が赴くままに進んでいると、ようやくテントが張れそうな開けた場所に出ました。

でも頑張ってテント張ったぜよ。
やや強引に設営した為、地面ゴツゴツで不安定だし、蛾や蚊は群がってくるし、男ばっかでむさ苦しいしで劣悪っぷりが甚だしいが、秘密基地ってのは大体そんなもんだ。

ようやく環境が整い、本日のディナーにありついた面々。
当初はキャンプと言えば定番だろって事で、カレーを作る気満々でいたのだが、どいつもこいつも具材ばかりに気を取られて炊飯の仕度を誰も用意してなかった為、結局カップラーメンに不時着。

（ヤケクソ）

食後はしばらくまったりと団らんタイム。
己らの夢や恋愛話について語り合ったり・・・はしなかったが、思い思いに各々の樹海生活を満喫した。

この日に発売したDSのゼル伝をやり出したカッパ氏（先程からずっと我慢してた様だ）。
樹海にいる事を忘れさせる、なかなかのくつろぎっぷりである。

2chの一人隠れんぼスレにて実況を行いだすカッパ氏。

（※下記の枠内は、当日に実況を行ったスレの一部を補完したものであり、直接流れに関係ない様なカキコは削除しているものの、基本的に記述内容自体はそのままの状態で公開しております）

霊が一番出現しやすいと言われる時間帯という事もあり、 なんとなくテント内の緊張感が高まってきた。

隠れる場所であるテント内には、塩水の入ったコップを用意。

さあ、いよいよ狂気と戦慄のお遊びがスタートです。
ちょっくら銭湯にでも出かけるかの様なナリで、不安定過ぎる足元をライトで照らしながら、気をつけて漆黒の闇の中を進んでいきます。

テントから３、４０ｍばかし離れた場所を風呂に見立て、桶に水を入れて、魔改造されたぬいぐるみ魅音を置く事にしました。

で、いちいちテントまで戻って獣道をまた往復するのがかったるい事山の如しなので、その辺をちょっとウロウロして１０数え、ぬいぐるみに刃を突き刺しました。
（テントでは待機組のニシナギと逆本が電気を消してラジオをつけている）

テント前で鬼のぬいぐるみ迎撃態勢の大魔王。

【隠れる時の注意】

●家の外に出ない

●テレビ以外の電気(明かり)は必ず消す

●塩水も持って一緒に隠れる事

●隠れてる時は静かに

●２時間が遊ぶ限度

●同居人がいる場合はやめときましょう。
(同居人に何らかの害があると噂されています)

●気をしっかり持つ。

隠れ中のテント内。
息を潜め、もしかしたら本当に鬼のぬいぐるみがやって来るんじゃないかと怯えながら、時が経つのをひたすら待ちます。
いつ何が起きてもおかしくない様な圧迫した雰囲気が、一同に言い知れぬ不安を与え、それはさながらゲシュタポから身を隠している政治犯の如く、妙な緊張感を漂わさせる・・・。

ところで、大魔王が持ってきたライト兼・ラジオ兼・防犯ブザー兼・充電器（手動）で、携帯のバッテリーを充電しながらラジオをつけていたところ、何やらノイズ混じりで「あっ、あっ」と不気味な喘ぎ声の様なものが聞こえてきました。

引き続き重苦しい雰囲気のテント内。
何せ、ただでさえ霊をぬいぐるみに呼び寄せる危険な行為だってのに、よりにもよって、自殺者の浮かばれない自縛霊だの浮遊霊だのがウヨウヨ彷徨ってるであろう樹海（しかも、前の月の5月頃は年間で一番自殺者が多い）でやっちまっているのである。
もはや、ある意味ではこれこそ自殺行為だ。

結局、野犬の鳴き声の様なものや、「ガサッ」とかいう蛾がテントに当たる音、風に揺れる木のざわめきさえにいちいちビビリながら、1時間程隠れてましたが、特にこれといった怪異は無く、そろそろ飽きてきたので遊びを終える事にしました。

【終らし方】

●まず塩水半分口にふくんだまま、隠れてる場所から出る。

●何か見えても感じても絶対塩水吐かないで、そのままぬいぐるみを探す。

●ぬいぐるみを見つけたら、まずぬいぐるみにコップの残りの塩水をかける。その後、口の中の塩水も吹き掛ける。

●吹き掛けた後『私の勝ち』と３回言って終わり。

●ぬいぐるみは必ず捨てる。（最終的に燃える形であればいい）

当たり前っちゃー当たり前の事なんですが、ぬいぐるみは先程と同じ位置で、心なしか悲しそうな顔して横たわっていました。

ぬいぐるみに塩水をブッカケ、一人隠れんぼ完了。

そして、樹海にも希望の朝が来た。

ようやく緊張感から解放された面々。

こうして我々は、 幽霊求めて迷走の末、結局一睡も出来ぬまま、よろよろと樹海を後にしたのだった。