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大分県別府市の背後には、温泉地の源である活火山が聳えるが、
その山腹には遊園地の廃墟が残されている。 九州暗黒観光の旅も、いよいよ大詰めを迎える。
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前回までのあらすじ:
未曾有の超大型台風19号が日本列島に直撃待ったなしというギリギリの状況の中、
九州の探索に打って出た我々は、チャリで禁断の洞窟、タクシーで異形の珍寺という横綱級物件を次々に踏破する事に成功。 |
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しかし、天候に不気味な影響が出始めた事を受け、
念の為、出発地点である別府市内まで引き返す(写真は別府タワー)。
これは、翌々日の13日午前予定の帰りのフライト(別府空港発の羽田空港行き)を考慮し、
万一に備えて、なるべく近場に移動しておこうという安全策であった。
そして、別府市内のネカフェで一泊後、
探索は実質この日限りとなる12日、我々はこの旅、最後の目的地に向けて歩みを進めていた。
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2014年10月12日午前11時、
観光地・志高湖に続く山道。
台風接近に伴い、山から逃げ出す反対側の車の渋滞を横目に、雨が降る中、徒歩でストイックに廃墟を目指す男達がいた。
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空港からなるべく近い宿を予約しようとホテルに電話したところ、「空室あるけど台風で屋根のトタンが吹っ飛ぶかもしれないから、気になるならやめた方がいい」と説得されたんじゃが。 |
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屋根がトタンってそれどんなホテルですか・・・台風じゃなくても危険ですよ・・・。 |
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これから廃墟行くってのに、危険もへったくれも無いですけどね・・・。
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志高ユートピア |
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志高ユートピアは、1968年に志高湖畔にオープンした遊園地である。
2003年に休園となった後、廃墟と化している。
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昨日寝ないでネカフェで調べたら、市内からアクセスし易くてちょうど良い物件があってな。 |
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寝ろよ・・・そして普通に観光するという選択肢は無いのかよ・・・。 |
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別府に来たってのに全く温泉に入ってないですからね・・・。
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かつてエントランスの建物があったと思われる場所。
特徴的な三角屋根であった事から、この物件を象徴する存在だったが、
残念ながら既に取り壊されたらしく、更地と化していた。
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一瞬別の場所かと思ったが、
端の方に置かれていた看板には、残念ながらちゃんとテーマパーク名が記されていた。 どうやらここで間違いないようだ。
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気を取り直して進んでいくと、
まず見えてきたのが、草むらの中にある「迷路」と書かれた建物。
雰囲気的に売店か何かだったと思われる。
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さて、肝心の迷路は何処にあるのかと周囲を見渡してみると、
草むらの向こう側に、何やら要塞の様な建物がある。
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近づいてみると、木材が散乱する建物の残骸が広がっていた。
ニュージーランドからやってきたいう巨大迷路「ランズボローメイズ」の成れの果てである。
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あーあ、今ではボロボロメイズといった感じじゃな・・・。 |
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以前より難易度はハードモードになってる感じですがね・・・。 |
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所々の木材から釘が飛び出してて何気に危険な場所ですね・・・。
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かろうじて骨組みや階段の一部は残っていたが、
完全崩壊も時間の問題といった雰囲気だ。
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続いてあったのが、お化け屋敷の廃墟。
見た目の不気味さなどから、廃墟の通称として「お化け屋敷」というのはありがちだが、
これはそのままの意味でお化け屋敷の廃墟だ。
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一部では「出る」といった心霊的な噂も囁かれる場所らしいが、何とも身も蓋もない感じである。
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正面入口らしき場所を発見。 入場200円という良心価格だが、迷路の半額という所になんとなく不安を感じさせる。
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無いですね・・・つーか閣下も過去何度も心スポやら廃墟やら探索してる割に持ってきてないんですね・・・。
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内部に一歩入ると、文化祭っぽい魑魅魍魎が蠢く通路が続いており、
フラッシュ撮影しないと何も見えないくらい真っ暗だった。
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待っちょれ、今スマホにLED懐中電灯アプリをDLしている。
電波悪いから少し時間がかかるぞい。 |
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さすが現代っ子ですね・・・。僕とヨシオさん、未だガラケーだし・・・。
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なんというか、ガジェットの発達に伴って色々な情緒が失われつつあるような・・・。 |
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途中、階段を上ると急に足下が弾む床の仕掛けや・・・
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ユラユラ揺れる吊り橋など物理的な驚き要素がありつつ・・・
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スマホのライト頼りにお化け屋敷の廃墟を進む。
誰もが「今こんな事してる場合じゃないのに・・・」という思いを胸中に隠しながら。
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気をつけろ、浮遊霊じゃなく浮浪者がいるかもしれんぞ。 |
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しかしホント、気がつくと我々はお化け屋敷にいますね・・・。 |
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これだけお化け屋敷が出てくるサイトも珍しいですよ・・・。
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檻の中には顔面が抜け落ちた獣人が、健気にも未だ訪れてくる者を待ち構えていた。
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檻の中でさらに鎖に繋がれてるなんてかなりヤバい奴ですね・・・。
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こちらはもはや何であったか分からない仕掛けの残骸。
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他にもオブジェがあったと思しきスペースはあったが、撤去されたか破壊されたのか、もぬけの殻だった。
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ちなみにお化け屋敷の2階は物置だった。
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お化け屋敷から少し進むと、切符売り場の建物があった。
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販売窓口には電話やスタンプなどがそのまま置かれている。
料金表を見るに、今ではそんなものがあった面影さえ分からないようなアトラクションも結構あったようだ。
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メインのアトラクションが集まっていたプレイランドの跡地。
中央にある楕円形状のコンクリのスペースは、かつてのローラースケート場だったようだ。
また、ここを囲むようにスペースコースターというものが設置されていたそうだが、
残念ながら閉園後の早い時期に綺麗に撤去されてしまったらしい。
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こちらも切符売り場の小屋。
ツタに侵食された三角屋根の建物がいい感じだ。
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草木の奥の方にも別の建物が見えるが、近寄るのが億劫になるような鬱蒼とした状態。
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クソ、明らかにあっちのめんどくさそうな方に何かありやがるな・・・。 |
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何で「鬱蒼」に「鬱」という漢字が含まれているのかがよく分かりますな・・・。 |
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しかし頑張って進んだ道無き道の先には、坂の下に広がるゴーカートのコース跡があった。
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このユートピアの名物であり、西日本唯一の本格レーシングカートだったという。
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カートもそのまま放置されていたが、
今ではあまりにも周囲が緑に覆われてしまって走行不能だ。
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パッと見だと芝狩り機みたいな雰囲気になっとるやんけ・・・。 |
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でもそういや、芝刈り機レースというのが海外にあるそうですよ・・・。
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ゴーカート置き場の建物もあったが、見るも無残に倒壊してしまっていた。
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今度は給水塔のような建物がある向こう側の方へ。
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塔は内部の階段で上まで登れるようになっており、
外の滑り台で下まで降りてこれるという造りだった。
滑ってみたい衝動に駆られたが、階段が非常にモロくなっているようだった為、今回登るのは遠慮しておいた。
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続いて隣接する建物の方に接近。
緑に呑み込まれていた為、塔に近づいてみて初めて存在に気づかされた。
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ここは屋根のある開けたスペースとなっていた。
休憩所か、あるいはデパートの屋上的な遊具が並んでいた場所だったのだろうか。
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2台だけ寄り添うように残されていたライド型の遊具。 |
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え、嫌です、絶対乗らないですよ。いい大人がみっともない。
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ちーん。 |
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射的やボール投げといったゲームコーナーの跡地。
今でも営業時の名残を感じさせる残留物がいくつかあった。
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坂を上っていくと、ホテルの廃墟が見えてきた。
3階建てでそれなりに規模感がある。
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正面玄関の方の外観。
風でぶら下がっているケーブルが揺れている所為か、絶えず何処からか「ブーーン」という電磁波の様なノイズ音が辺りに響いて、非常に不気味であった。
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何故か入口の手前には焼け焦げたソファーらしきものが転がっており、ヤバそうな雰囲気を漂わせていた。
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フルオープンでウェルカム状態の入口から内部へ。
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広々としたロビースペース。
特徴的な逆Y字みたいな階段の辺りがフロントであった模様。 バーベキューなども楽しめたようだ。
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ロビーの右手に進むと、食堂だったと思われる部屋があった。
足下にはあちこちに食器が散乱している。
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ロビーの奥に無造作に取り残されたゲーム機の数々。
これらの残留物だけでも、この物件は当たりだと思えた。
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こんなとこばっか行くから、「あの物件の場所何処ですか?」みたいなメールが未だに来るんですよ・・・。 |
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もう一体どんな層が見てくれてるのか分からないですよね・・・。
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敷地の端っこの方にあった最後の建物。
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中を覗くと「ミルキーランド」と表記された看板があり、鹿園だった場所と思われる。
園内には他にも「フラミンゴランド」やミニ動物園があったという。
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崩壊が進むかつての高原リゾート。
今回の台風で止めを刺されない事を祈りながら、我々は雨脚が強まる同地を後にした。
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さて、
洞窟から廃墟へと駆け抜けた、九州暗黒観光の旅もいよいよエンディングである。
最悪な条件下であった割には、焦燥感のおかげで結果的にだいぶスケジュールが巻き、当初予定していなかった場所まで訪れる事ができて、
満足のいく撮れ高となった。
そしてその達成ムードから気分が高揚し、なんとなく別府湾の浜辺にやって来た。
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こんな天候だというのに、こんな場所でライブイベントをやっていた。
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沈みゆくタイタニック号で最後まで演奏する楽団の奴らかヨ。 |
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これだけ各地のイベントが次々と中止になっているのに何故・・・。 |
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台風を煽って迎撃する大魔王。
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台風のバッキャローーーー!! 来るなら来てみやがれーーー!!! |
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さすが嵐を呼ぶ男である閣下、台風にさえ物怖じしないその姿勢、脱帽です・・・。
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そして、その数時間後――台風19号ヴォンフォン上陸。
広東語でスズメバチを意味するその名の通り、列島全体に猛威をふるい、各地に大きな傷痕を残した。
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という訳で、
帰りのフライトの欠航が決定。
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2014年10月13日未明、台風が上陸中の別府市内の様子。
建物の壁伝いでないと歩けない程の凄まじい風雨であった。
しかし、ギリギリ運行していた早朝のバスで福岡まで移動し、鉄道が一斉に運休となる直前のタイミングで新幹線に飛び乗り、どうにか東京まで帰る事に成功した。
これに懲りずに、我々の旅はまだまだ続く――。
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