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[2006.08.29]

プロローグ



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―――いつの頃からか、人は死ぬと星になると言われている。

夜空に煌めき、地上の我々を見守るのだと。
古代ローマの元老の政治家キケロも、まさしくロマンチックなこの考えを書に残し、哲学の立場から厳密に立証している。
当時の哲学では、流れ星は人の魂が肉体から抜け出て飛び出していくところらしい。
今から約200万年前にたった1人の女性から生まれた人類の子孫が、これまで一体何人死んだのか計算してみると、大体6666億人が天に召されているという事になる(一定の条件による計算の為、全く根拠はない)らしいが、そうなると我々の暮らす銀河系だけでも、1000億の星があるといわれ、更に銀河系の様な星の集団が1000億以上ある為、これまで人が死んだ数に対して、明らかに星の数が多過ぎる。
となると、何もこの星の数は人類に限定したものではなく、この宇宙に存在した全生命の魂だと考えられる。

だが、中には何らかの原因により星になれなかったり、星になる事を拒む魂が存在する―――。

都奇和荘

いやいや~、今日わざわざ来てもらったのは他でもないんですよ~。
あ、知人の土産のナタデココ入り猿の脳味噌ラーメン食べます?

いりませんよ、そんなもん!つーか何処の土産ですか、それは!
とっとと用件を言って下さいよ、用件を!

実はですね、以前ヨシオさん達に手伝ってもらった「それ逝け!心霊スポット」が発売後、多くの読者から絶大なる支持を得ましてね。
この度、晴れて続編を出す事になったんですよ、ええ。

手伝うも何も、全面的に私達のおかげじゃねーですかっ!

まあまあ。
売上の方も全国でなんと2000ンン冊を記録してるそうでしてね。
同級生の編集者も、こりゃ続編を出すべきだって、しつこく勧めてくるんだ。

あんなインチキ本で人々に身銭を切らせるなんて、良心の呵責に苛まれませんか?

はて、おっしゃる事の意味がいまいち理解出来ませんが。
まあ、求められてるものには出来るだけ応えたいってのが人情ですからね。仕方なく、再びやる事にした訳ですよ。
決して印税が思いの他入らなかった事で家賃の支払いが危うくなり、頼みに頼んで無理矢理出版予定にしてもらったんじゃないですよ。

そうですか、せいぜい頑張って下さい。ご自身で。

ところがですね、最近私、スピリチュアル・カウンセリングってのを始めましてね。霊視によって、多くの悩める人々を助けているんですよ。
これが結構おいしい・・・いえ、忙しくてですね、尋常じゃないくらい。
しかも、他にも地方の講演会やらサイン会やらフェアーの打ち合わせやらがありまして、とてもじゃないけど、本の取材に割ける時間が無いんだなあ、うん。

ダカラナンデスカ?

ってな訳でして、今回もまたお願いしたいんですよ、スポット巡り。
私自ら出向きたいのは山々なんですがね、売れっ子はそうもいきませんでしてねえ。決して恐いから行けないんじゃないんですよ、ええ。
やはり、常日頃暇を持て余しているヨシオさん達が適役だと思いましてね。

謹んでお断りします。

まあまあ、もちろんタダでとは言いませんよ。
ちゃんとそれ相応の見返りはあります。
今回はなんと、おニャン子クラブのメンバー全員が当時実際に使っていたという、汗拭きタオルのセットを・・・

それじゃ、バイなら。

あっ、ちょっ、待って、ヨシオさんっ!お話はまだ終わってませんよ!
えーと、貴方の背中に白い老婆がおぶさってますよ!
いいんですか!?そのままでは貴方は確実に取り殺されますヨ!?
マジですよ!そして貴方の来世はゲジゲジになってしまいますヨ!?
いいんですかーッ!?

いいんですヨーッ!

ヨシオ逃走。

くっ、こうなったらば仕方ありませんね・・・。
不本意ではありますが、あとは思い当たる人物は彼くらいしか・・・。いささか強引かつ汚い手を使わざるをえませんね・・・。

で、翌日―――

いやいや~、今日わざわざ来てもらったのは他でもないんですよ~。
あ、知人の土産のナタデココ入り猿の脳味噌ラーメン食べます?

あとで食う。それより一体何用じゃ?
この高貴なワシを、こんな小汚い市井の巣に呼びつけるんじゃから、もちろん何か面白い理由があるんじゃろーな?

ええ、それはもう。
実はですね、私この前、所用があって実家に帰りましてね、久しぶりに蔵の内部の整理をさせられたんですよ、ええ。
したらね、ガラクタの山にあった箱の中からこんなものが出てきたんですよ。

こ、これは・・・?

恐らくこれは、私の先祖である早見土座衛門が子孫に残した、宝の在り処を示す地図であると考えられます。

何いっ!?宝の地図じゃと!?
・・・でもコレ、わら半紙にサインペンで描いてある様な・・・。

それは完全に気のせいです。
家の伝記によれば、早見土座衛門は今から約300年程前の元禄時代の人物で、結構な富と権力を持っていたそうでしてね。
もしかしたら、大判小判か何かをザックザックと、一族の万一の時に備えて何処かに隠したかもしれないんですよ。

ほほう。で?

ところがですね、肝心のその在り処がいまいち何処だか分からないんですね。
唯一分かっているのは、地図に「我、死霊に守護されし禁断の地に財を秘める!」という文章が書かれてある事から、つまり、宝の在り処は、全国にある心霊スポットの何処かという事になります。

心スポに!?霊が出る所に宝アリって訳か・・・。
あれ、でもよ、元禄時代なのに「!」って・・・。

ゴホゴホッ!
で、まあ、私としましても、その宝とやらを何とか拝んでみたい訳なんですがね、いかんせん、ここ最近忙しくてですね、なかなか自ら探しに行く時間ってのが無いんですねえ。
でも、ノンビリしてたら誰かに先に掠め取られてしまうかもしれない。
そこで、行動力やら洞察力やら何やらが抜群な大魔王さんを見込んで、是非この宝を探し出して欲しいんですよ。
もちろん、宝を見つける事が出来たら、何割か差し上げますから。

フハハ、なるほど。
確かに貴様の周囲でその様な武勇伝を頼めるのは、ワシくらいなもんじゃからな。でんでんででんでん!

ええ、そうですとも。
一応、大魔王さんに知らせる前に、マネージャーたるヨシオさんに話してはみたんですがね、彼、宝の存在を全然信じず、相手にしてくれなかったんだなあ。
まったく、夢の無い大人ってのには、なりたくないもんですよ。

ハッ、わざわざあんな奴を通さずとも、最初からワシに直接言えばよかったんじゃよ。
ちょこざいなツッコミをされるだけで、時間がもったいないからな。
良かろう、その話乗った。
けど、心スポっつっても、一体何処へ行きゃいいんじゃ?
虱潰しにローラー作戦かけてたら、かなり時間を要しちまうぜ。

ご安心下さい。
既に宝の在り処として該当しそうなスポットを幾つかピックアップしていますので、私が指示した場所に行っていただければいいのです。
それに、現地へのガイドとして、私の弟子を同行させましょう。
これで私も安心・・あ、いや、えーと、あ、そうだ。
現地の状況は詳しく調査し、随時私に報告して下さい。
分析する事で、より宝に近づける可能性が高まるってもんですからね、ええ。

(ズズーッ、ズルズルズルッ)美味いな、このラーメン。

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