1971年8月23日の蒸し暑い朝、スペイン南部アンダルシア地方ハエン県のシェラマヒナ山中にあるベルメス・デ・ラ・モラレダという小さな村で、オリーブを栽培し、山羊を飼って細々と暮らしていたフワン・ペレイラ一家に、突如として尋常じゃない異変が起こったんですねぇ。
当時、ペレイラ家の奥さんであるマリアが、いつものように朝食の支度をしようと台所に入ったところ、台所のタイルの床に見知らぬ男の顔のようなものがくっきりと浮かんでいたんですよ。それは等身大の男の顔で、目も鼻も口も髪の毛もはっきりした灰色の線でくっきりと描き出されているんですよ。マリアは恐ろしくなって、すぐに夫を呼んだ。彼女のただならない声に、駆けつけた夫のフワンも怪訝そうな声をあげた。 子どもの悪戯だと思うには、こんなにうまく絵を描ける者は家にはいないはず。彼らは誰かがふざけて描いたんだろうと、雑巾でごしごしと床をこすったんだ。しかし、どんなにこすっても、その顔は消えないんだなぁ。こすればこする程、顔の表情は悲しげになり、彼らを怯えさせたんですね。この顔は、床の表面に描かれているのではなく、コンクリートそのものの模様だったんだ。彼らは、これは悪魔が描いた絵かもしれないと思い、必死に神に祈ったんですけどね、床の絵は消えない。 恐ろしくなったフワンは、息子とつるはしで顔の浮かんだタイルを破壊し、セメントを流し込みコンクリートに取り替えました。
ところがですね、3週間たつと、前の顔と同じところに同じような顔が再び浮かび上がってきたんですよ。しかも、前よりも目鼻立ちがさらにはっきりしていたんです、ええ。その上、日によって顔の表情が変化してるように見えたんですねぇ。 事件は口々に広まって大騒ぎになり、11月2日にベルメスの市長の提案で顔の破壊は禁止とし、 つめかけた住民達の前で、顔の部分のコンクリートが注意深く切り取られ、部屋の壁にかけられ、その下に花を供えて、懇ろに供養されたんですよ。 この騒ぎに黙っているわけにはいかなくなった地方当局は、顔が浮き上がった部分の本格的な調査を開始したんですね。早速、2mほど床下の土を掘ってみたところ、なんとたくさんの人骨が見つかったんですよ。そして、古い資料を調べてみると、この家は17世紀のフェリペ4世時代の墓地の上に建てられている事がわかったんだなぁ。 また、一部情報では、発見された人骨には頭蓋骨が無かったとされ、 浮き出た顔は、スペイン内戦で虐殺された人々のものではないかとも言われたそうです。
そして、顔を切り取った後も異変はまだ続いたんですね。掘った穴を埋め、セメントで塗り固めた3ヶ月後に、別の顔が浮かび上がったんですよ。その2週間後には、女性らしい顔も現れた。それから間もなくして、今度は小さな様々な顔が大きな顔を囲むようにして、次々と浮かび上がってきちゃったんだ。なんと18個も。最初はぼんやりとした輪郭が現れて、それが徐々に人の顔になったのです。さらにお次は、人の声が聞こえ始めるようになった。調査官が超高感度のマイクを設置すると、人の耳には聞き取れない苦しげなうめき声や泣き声や、どこの言葉かわからないような言語がキャッチされたんですよ、ええ。ペレイラ夫婦も、ここまできてはさすがに我慢が出来なくなり、台所を完全に改装しちゃったんだ。その後、顔は1974年頃からだんだん現れなくなったんですけどね、1982年からまたも現れ始めたんですよ。以降、この家はラ・カサ・デ・ラス・カラス(顔の家)と呼ばれて観光地化し、大勢の人々が見物に訪れるようになったそうなんですね。
一方この超常現象は、懐疑派の科学者などによる調査で、塗料を用いた捏造説が指摘されており、 コンクリートから採取された成分にいくつかの薬剤の存在が疑われ、 これらが紫外線によって変色したという報告があるそうなんですね。 また、実は1972年2月の時点で、同現象に否定的な立場を取った地元新聞イデアル紙で「顔は硝酸塩と塩化銀で描かれた単なる悪戯である」という分析結果を発表しており、 再現実験も行われ、確かにこの方法なら、あらかじめ描かれた顔が後になって出現する事が可能というものだった。 こうした見解が出始めると、それまで肯定的な報道を行ってきたメディアも超常現象ではないと認め始め、以降人々のベルメスの顔への関心は薄れていったそうなんですね。 最初に顔を発見したマリア・ゴメス・カマラ▲ 顔は彼女が無意識に霊能力で念写したものではないかという見解もある。 しかし、その後『エニグマ』という雑誌の創刊に伴い、ベルメスの顔の仮説が再び取り上げられた事などにより再び注目を集め、 2004年2月3日に最初の発見者であるマリア・ゴメスが85歳で死去した際、 スペイン超心理学研究協会(SEIP)という団体の会長ぺドロ・アモロスが、「染みは霊体(エクトプラズム)によるもの」と主張。そしてマリアの実家の建物を調査したところ、そこの床にも顔が浮かび上がっていたという新展開があったそうなんですよ。 もっとも、これに対しては新聞各社が偽物であると主張しており、 顔を利用して観光収益を狙った村役場が、最初に顔が出現したマリアの家が既に60万ユーロにまで高騰していて購入出来ない為、 その代わりに8.4万ユーロ程度で買える別の家に顔を捏造して客寄せしようとしたと批判しているんですね。
加えて、2007年5月にはフランシスコ・マニェス調査員とエル・ムンド紙編集者ハビエル・カバニージェスによる『ベルメスの顔』というタイトルの暴露本が出版され、 最初から同現象は悪戯に過ぎず、これまでの顔はマリアの家族や関係者が共謀して描いたものだと公表しているんですよ。 一方、マリア・ゴメスの家族はあくまで顔は営利目的ではないと主張したものの、それに反して、 2005年6月から「ベルメスの顔」という商標登録がマリアの家族であるカルメン・ゴメス・エルバス名義でなされていたそうなんですね。 こうした事から、一応に“悪戯である可能性が高い”という結論に至っているベルメスの顔ですが、 問題の家は現存し、引き続き真偽が議論されており、ベルメスの住民の多くには顔が本物だと信じられているってな話ですよ、ええ。
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