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1531年12月9日、メキシコの首都メキシコシティ北東に位置するテペヤックの丘で、先住民フアン・ディエゴの前に聖母が出現した(※1)。
その姿は先住民のような褐色の肌で、星でいっぱいのマントと光を纏っていたという。
※1:12月9日~11日にかけて数回出現した為、毎年同月12日には盛大な聖母祭が行われる。
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聖母は「この地に大聖堂を建てるよう司教に伝えよ」と求めたそうだが(※2)、ディエゴがこの出来事を司教に話しても信じなかった。
そこで再び現れた聖母は、時季的に丘で咲かないはずのバラの花をディエゴに渡し、証拠として司教に見せるよう告げた。
※2:現地アステカ族のナワトル語で呼びかけた。
だがこの時、ディエゴ(2002年に列聖)は病気の親類の助けを呼びに行く途中だった為、話しかけてくる聖母を一旦スルーしようとした。
すると聖母は彼を制止し、親類の回復を告げたところ、実際にその後、癒されていたという。
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ディエゴが言う通りにすると、なんと、花を包んでいたマントに聖母の姿が浮かび上がり、司教も今度は聖母の出現を信じたという。
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これがメキシコの宗教的象徴「グアダルーペの聖母」の伝説であり、バチカンが公認したカトリック3大奇跡(※3)の一つだ。
※3:他はルルドの泉とファティマの予言。
グアダルーペの聖母によるマントの奇跡は、多くのメキシコ先住民をカトリックに改宗させる事となった。
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そして聖母の神託通り、後に丘の麓に建てられ、大勢の信者を集める聖地となったのが、巨大な「グアダルーペ寺院」である。
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新寺院と旧寺院が隣り合わせで並んでいるのが特徴的。
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新寺院(1976年建造)はディズニーランドのスペースマウンテンを思わせるフォルム。約2万人が収容出来る現代建築だ。 |
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聖母像が浮かぶ“奇跡のマント”は現在、新寺院の聖堂内正面の高い位置に額装で掲げられ、
真下の動く歩道から見上げて参拝可能。
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空港のターミナルでお馴染みの動く歩道(ムービング・ウォーク)。
パンダやマンモスのミイラ同様、見学者の列がなかなか前に進まない為、こうなったという。 |
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この約500年前のマントには他にも色々逸話があるが、信者が拝みながらどんどん流されていく、ハイテク仕様な祀られ方もまた不思議である。
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マントは1世紀以上も掲げられているが、全く色褪せしていない。
1785年には清掃員が作業中に誤って硝酸をかけ、
1921年には教会の弱体化を狙った大統領府の職員が真下で爆破事件を起こしたが、いずれも無傷だったという。
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専門家がマントを分析した結果、聖母を描いた染料の成分は地球上に存在しない事が判明。
また、聖母の瞳を拡大すると、ディエゴ、司教、通訳の3人が描かれているとも言われている。
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旧寺院(1709年建造)はシンプルなゴシック建築。 どう頑張って撮っても斜めに写ったが、それもそのはず、
地盤沈下により建物が傾いている為、あちこち修復が行われているという。 |
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こちらの聖堂内には、褐色の肌が印象的な聖母像が鎮座し、神々しい存在感を放っている。 |
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また、こちらの建物には、グアダルーペ関連の美術品や聖具が収蔵されたミュージアムも併設。
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特に注目なのが「エクスボト」と呼ばれる奉納画。
メキシコの絵馬のようなもので、聖母などの宗教イラストが味わい深いタッチで描かれたブリキ板が、回廊の壁にズラッと展示されていた。
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寺院裏側には小さなテペヤックの丘があり、頂上にはセリート礼拝堂が建っている。
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なお、少し離れた市内中心部の地下鉄「イダルゴ駅」の出入口にも、1997年6月にグアダルーペの聖母の姿が浮かび上がったとされる、
“駅構内の床のタイル”が保護ガラス内に祀られている。
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通称「メトロの聖母」。 地下鉄の出入口である階段の横に、祭壇が設置されている。
聖母やキリストの姿とされるイコン(聖像)は、世界各地の様々な場所や物に浮かび上がっているが、
こんなにも街中の公共の場に常設された祀られ方も珍しいだろう。
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訪問時は、経年劣化で薄れたせいか明確な姿は見えず、タイルを気にかけるような人もいなかったが、発見当時は数千人の信者が各地から押し寄せたという。
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このように、メキシコ社会では聖母信仰が根付き、敬愛されているのだ。
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