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[2020.05.10]

志免鉱業所竪坑櫓
~街中に聳える炭鉱跡の巨大廃墟~



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福岡空港からも程近い、福岡県志免町(しめまち)の住宅街の高台には、奇妙な巨塔の廃墟が忽然と聳え立っている。
第二次世界大戦中、旧日本海軍が石炭の採掘施設として建造した、志免炭鉱の遺構「志免鉱業所竪坑櫓」である(※1)。

※1:1941年12月28日着工、1943年5月10日竣工。高さ47.6m、長辺15m、短辺12.25m。
ドイツで当時最先端だった竪坑櫓の技術を学んだ、日本海軍の猪俣昇氏による設計。
志免は日本唯一の国営炭鉱で、軍艦の燃料として使う石炭の確保が重要だった為、 戦時下の物資が不足する中でも、イギリス製の鋼鉄を多数用いて櫓が造られたという。


この不思議な形の鉄筋コンクリート・ビルは、 “ワインディング・タワー”(塔櫓捲式)と呼ばれる最も発達した形式の櫓(※2)で、 地上9階、地下1階のうち、5階までは柱と梁のみで構成されている。

※2:現存する戦前のワインディング・タワーは、 世界でも同地と龍鳳炭鉱(中国・撫順市)、トランブルール炭鉱(ベルギー・リエージュ州)の3か所のみ。


真下には深さ430mの竪坑が掘られ、櫓上部に設置された1000馬力の巻上機でケージを昇降させて、石炭や労働者を運んでいた。
“東洋一の竪坑”と謳われたが、やがて石炭から石油へとエネルギー需要が変化し、1964年に閉山となった後に取り残された。


現在は国の重要文化財に指定され、町のランドマークとして、グラウンドや公園などがある総合福祉施設シーメイト内に保存されている。


その姿はまるで、無邪気にアスレチックで遊ぶ子供達を、すぐ側で見守る寡黙な老人のようでもある。


建物の背後には、 炭鉱で不要となった土で出来たボタ山が。




かつての巨大エレベーター付近には、炭鉱へ続く斜坑口跡なども保存されている。


最上階にボスがいそうな凄みのある外観と、ほのぼのとした周辺環境のコントラストが面白い。


ちなみに海外のマニアからは、バイオハザードが起きたら立て篭もれそうという事で、「対ゾンビ要塞」と呼ばれているらしい。


なお、訪問時はちょうど、まさかの修理工事(※3)が始まった時期であり、 櫓の持ち味たるスラッとした下半身が、足場やシートで覆われてしまっていた。

※3:日本の近代化を物語る貴重な産業遺産という事で、 コンクリートの老朽化に伴う補修を、実に3年がかりで手厚く行うらしい。


故に通常時の様子は潔く他人任せとしたい。
フェンスに囲まれ立ち入り禁止だが、たまにライトアップのイベントが行われている模様。


イメージと違う有様に思わず脱力してorzとなったが、長い歴史の中においては、ある意味これはこれで、レアな状態と言えなくもないだろう。


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