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[2020.04.07]

サン・ガルガーノ
~岩に突き刺さる聖剣伝説の丘~



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アーサー王伝説に登場する“聖剣エクスカリバー”は、様々な作品で引用される有名な武器だが、実はモデルなのかもしれない剣が、今もイタリア・トスカーナ州にある(※1)。

※1:アーサー王がエクスカリバーを入手する経緯は、伝説によって多少異なる。
岩(石)から引き抜いた剣のパターンが有名だが、実はこれはカリバー(カリバーン)という別の剣で、 エクスカリバーは湖の貴婦人から与えられた方とされる事もある。
あるいは、カリバーを打ち直したものがエクスカリバーだとか、諸説ある。


そこは古都シエナから約30km離れた「サン・ガルガーノ」という場所で、 12世紀の勇猛な騎士ガルガーノ・グイドッティが、“超自然的な力で岩に剣を突き刺した”という伝説が残る聖地なのだ。


1180年、戦いの日々に疲れ、故郷を囲むモンテ・シエペの丘に辿り着いたガルガーノは、虚しさから己の胸に剣を突き刺そうとした。
するとその時、「この地に教会を建てよ」と告げる大天使ミカエルが現れて、剣がするりと岩に刺さり、十字架の如く屹立したという(※2)。

※2:以降、ガルガーノは戦いを止め、人里離れたこの丘に小屋を建て、隠者の生活に入る。
そして、剣を守りながら祈りの日々を送り、1181年12月に32歳の若さで死んだ。
彼が岩に剣を突き刺した行為は、いきなり無茶な注文をしてくるミカエルに反発するあまり、つい力が入ったとか、 騎士引退を決意した際の平和と贖罪の証といった見解もある模様。


こうして後に建てられた丘の上の小さな教会は、麓で見守るように佇む修道院の廃墟とセットで、篤い信仰を集めている。


修道院は1218年に丘の麓で建設が始まり、1288年にようやく完成。
ガルガーノに捧げられた、シトー会の修道士によるトスカーナ最初のゴシック教会であった。










14世紀まで重要な宗教的中心地だったが、疫病などの影響で衰退し、15世紀に放棄された。


今では屋根が無い大聖堂が印象的だが、 1786年に落雷で鐘楼が倒れた影響で崩落したらしい(1550年には素材の鉛が売られた)。




その息を呑む神聖な美しさから、映画『ノスタルジア』などのロケ地にも使用されている。


一方、丘の上の教会は、聖人化したガルガーノの墓として、1182年に彼が暮らした小屋の跡に建設された。


内部には、12世紀のミイラ化した両手(普段は非公開で布がかけられている)が置かれた部屋もある。
これは伝説に登場する、剣を折ろうとして狼に腕を噛み千切られた男のものと考えられている。


そして教会の礼拝堂の中心に、現地で「ラ・スパーダ・ネッラ・ロッシア(岩の中の剣)」と呼ばれる聖剣が、 実に800年以上に渡り、岩に突き刺さったままの状態で保存されているのである。


宝石などの装飾は無く、錆付いていて、聖剣という割にはいささか華やかさに欠ける。
しかも過去に何度か、勇者になるべく剣を引き抜こうとした者が露出部分を折った為、 以後は周りをセメントで固めて補修され、強化プラスティックのカバーで覆われてしまった。
だがそれでも、目の前で醸し出される存在感は圧倒的である。


剣は長年、伝説を元にした後世の作り物と考えられていたが、2001年に行われた調査では、材質が実際に12世紀のものと判明。
岩盤に元々あった割れ目に剣を差し込んだのではないかとも言われていたが、 まるで砂の中に入れたかのように、剣と岩との間には、全く隙間が無かったという。
さらに、剣の下に謎の空洞がある事も確認されており、ガルガーノが埋葬された墓か、“キリストの聖杯”が隠されているとも言われているようだ。
根拠は無いが、礼拝堂が円形なのも、暗に聖杯を逆さにした形状を表しているのだとか。


そうした事から、ガルガーノの聖剣伝説がアイルランドへと伝わり、アーサー王の物語に吸収されたという説もあるようだ。
なんとも神秘的な“トスカーナのエクスカリバー”である。


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