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大阪府大阪市の下町、平野の商店街に位置する「全興寺（せんこうじ）」は、境内に“地獄堂”なる独自の施設を備えた寺院（※1）である。
※1：寺の起源は、飛鳥時代に聖徳太子が仏堂を建て、薬師如来像を安置した事による。
その後、周囲に人が住み始め、平野の町を形成していった。
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1989年、中高生のいじめや自殺が大きな社会問題となっていた事を受け、住職・川口良仁氏がこの地獄堂を設立した。
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近所の高齢女性から聞いた、「親に昔“悪い事をしたら地獄へ落ちる”と言われて育ったおかげで、悪い事をする気になれなくなった」という話をヒントに、江戸時代の古いお堂を改装したらしい。
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入口の壁には「地獄度・極楽度チェック」なる占いマシーンがあり、
日頃の行いに関する10の質問（2択）に答えると、地獄行きor極楽行きかの判定がなされる。
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薄暗い地獄堂内は、いかにも仕掛けがありそうな賽銭箱の上に閻魔大王が鎮座する他・・・
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赤鬼や奪衣婆の像などが置かれ、お化け屋敷とゲームコーナーが混じったような雰囲気。
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備え付けのドラを叩くと、閻魔様がガチなトーンで喋りだし、横の鏡におどろおどろしい地獄絵図が映るシステムとなっている。
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最後は地獄の長が自ら、「こんな所に行かぬよう、悪い事をせず、自分の命を大切に」と諭してくれる、実に道徳教育的な場所なのだが、恐怖のあまり途中で泣いて逃げ出す子供も多い模様（※2）。
※2：以前は入ると自動ドアが締め切られる仕様だったそうだ。
しかし、恐怖で非常ベルを押す人が続出した為、現在はドアが開けっ放しに。
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境内には他にも様々な見所があり、ちょっとしたテーマパークの様相を呈している。
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「地獄の釜の音が聞こえる石穴」。
読んで字の如く、この石の穴に頭を入れて耳を澄ますと“地獄の釜”が沸く音が聞こえるとか。
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石仏に囲まれた地下空間「ほとけのくに」。
四国八十八箇所霊場の砂を納めた手すり付きの階段を下りると、151体の石仏に囲まれた部屋の中心に曼荼羅のステンドグラスがあり、
そこに座って瞑想を行う事が出来る。
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レトログッズの展示がある「小さな駄菓子屋さんの博物館」。
住職が小さい頃（昭和20～30年頃）に集めた、駄菓子の箱や包装紙、玩具など数百点のコレクションが展示されており、1993年に蔵を改修してオープンした。
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訪れた時は人懐っこい黒猫がいて、まるで境内を案内してくれているかのようだった。
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ちょうど帰りがけに、散歩中の地元民と思しき老人2人が、「あんな地獄なんか子供騙しの嘘っぱちやろw」と、
色々と台無しな事を言っていたものの、そうしたざっくばらんな感じで親しまれている様子もまた、下町の寺ならではの良さに思えた。
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下町の優しさが生んだ、恐ろしくておもろい寺なのである。
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