> 魔界冒険記 > 魔界地図 -WONDER WORLD- > Article


[2019.12.15]

フンデルトヴァッサー・ハウス
~自然を愛した天才芸術家の奇想建築~



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オーストリアの首都ウィーンの街なかに、緑の木々が生い茂った外観の、明らかに異彩を放つ建物が聳えている。


芸術家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(※1)が創造した、その名も「フンデルトヴァッサー・ハウス」である。

※1:フンデルトヴァッサーは「百水」を意味する雅号で、本名はフリードリヒ・シュトーヴァッサー(1928年~2000年)。 “ウィーンのガウディ”とも呼ばれた芸術家(画家・建築家)である。
「自然との調和」を目指した作風で知られ、絵画や建築の創作においては、自然界に存在しない直線の使用を嫌った。


まるでテーマパークのような奇抜な見た目だが、居住者がいる歴とした集合住宅で、同国の文化遺産にも指定されている。




建物は至る所に植物が植えられ、土と草で覆われた屋根(空中庭園)やベランダ、グネグネ波打つカラフルな壁と床など、全体的に遊び心溢れる雰囲気ながら、不思議と周囲の景観にも馴染んでいる。


住人がいるので内部は見れないが、建物は住戸が53部屋、事務所4軒、テラス19ヶ所が設けられ、約250本の木が植えられているという。








建物1階にはカフェがあり、向かい側にはグッズショップも併設されている。


自然を愛したフンデルトヴァッサーは、都市部のビルのような画一的で無機質な直線を排除し、 植物のように成長する命の象徴たる曲線を多用した、独自の表現様式にこだわる人物だった(※2)。

※2:そうした作家人生を歩んだきっかけは、彼が第二次大戦後、旅の途中アフリカの大地で伝統的な赤土の家を目にし、 自然と共に暮らす人々の姿に強く惹かれた事だったという。
ちなみに、巨匠・宮崎駿も彼のファンで、作品の世界観や三鷹の森ジブリ美術館の造りに影響を受けたとか。


1972年、彼がテレビ番組に出演した際、“植物と共に生きる家”の構想を語ると、それに共感した当時のウィーン市長が建設を依頼。
従来の建築理論の常識を外れた内容だった為、建築家との衝突など紆余曲折ありつつ、着工から3年後の1986年に完成した(※3)。

※3:建設中、施工職人は壁を平らで直角に作りがちだった為、フンデルトヴァッサーが夜な夜なハンマーで角ばった部分を壊す事もあったという。


すると、「悪趣味」という一部の意見とは裏腹に、入居希望者が殺到。


フンデルトヴァッサーは、「家そのものが植物と共に成長してほしい」という願いから、室内を自由に作り変える事も住人に認め、 思い描いた理想の建築を見事に実現させたのである。


■関連記事
ヘンテコ・ロードサイダーズ~都内周辺の小ネタ珍スポ~
ヘンテコ・ロードサイダーズⅡ~人の造りし珍奇なるもの~
ヘンテコ・ロードサイダーズⅢ~路上のカオス&アートな物件5選~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ人は、多分こんな記事も読んでいます。

Back number

Maps

Archives

News Headline

ページのトップへ戻る
inserted by FC2 system