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[2018.06.18]

遊園寄りの物体X
~地球外生命体のミイラを売る手芸用品店~



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今年3月末、東京の下町にある手芸用品店「河内屋糸店」が60年もの長い歴史に幕を下ろした。
この店では、糸や生地など通常の手芸用品を販売する一方で、なんと“地球外生命体のミイラ”なるものを陳列していた。
オカルトサイト的には、ある意味で“ちょっとしたエリア51”とすら思える怪しい同地に、閉店直前のタイミングでギリギリ滑り込んだ。


河内屋糸店


噂の河内屋(かわちや)糸店は、 日本一遅いジェットコースターがある事で知られる、荒川区の「あらかわ遊園」のすぐ近くにあった。
最寄である都電の停留場「荒川遊園地前」から徒歩1分ほどで到着。


朝一で来た為、到着時はまだシャッターが閉まっていたが、すぐに店の奥様とお会いでき、開店時刻よりも早く店内に入れていただいた。

どうも、ジャスティン・ビーバーです・・・!

その朝の散歩番組みたいなノリは何だよ?

この日はそもそも本来の営業日ですらなかったようだが、 しばらくツイッターなどで閉店を知った人々が大勢訪れていた事もあり、ご厚意により急遽、店を開けてくださったようだ。


閉店を知らせる貼り紙。
2016年9月に店主の深沢優典さんが亡くなり、その後は奥様の幸枝さんが店を切り盛りされていたそうだが、 建物の老朽化や売り上げの減少(最近は手芸する人自体も減り、大手専門店やネット通販の利用者が増えた)などもあり、 店を畳む決意をしたのだという。


店内に一歩入ると、いきなり奇妙なオブジェに出迎えられ、 手芸用品店の皮を被った独自のインナースペースである事が察せられた。

これはどうやら侮れない感じじゃな・・・!

思ってたよりも濃度が高いですね・・・!


ほら、明らかにヤバいクリーチャーがいるぞ。

ハンドクラフト(手芸)っちゅーか、ラヴクラフト(クトゥルフ神話)じゃねーか。

まさか下町の店がこんな宇宙的恐怖に支配されていようとは。


こちらは目がイってる宇宙人みたいな彫刻。
店の最前線にて5万円で販売中であった。


どうやらこの辺にあるのは厄払いの置物らしい。


広義では彫刻品も手芸に含まれる訳だが、どちらかと言うと、骨董屋とか土産物屋にでも迷い込んだようなオリエンタルな雰囲気が漂う。

厄払いと一緒に客まで払ってしまったのかもな。

思っても言っちゃダメですよそれ。


足元を見ると、何故か銀色の巨大トカゲがいた。

なんかメカゴジラっぽい奴がいるぞ・・・。

ローランド・エメリッヒ版のテイストですね・・・。


この体長3m超のコモドオオトカゲは、 全身がアルミの鱗に覆われており、ご主人が2年以上かけて製作したものらしい。

なんという大胆なスペースの取り方・・・!
店内の中央がほぼコイツで占められてるじゃねーか・・・。

一応トカゲらしく尻尾は切り離して保管されてるんですな・・・。


2011年夏には、石川県立伝統産業工芸館の企画展で披露され、反響を呼んだらしく、 ちょうどこの撮影の後にも、ミュージカルの道具としてレンタルされていったようだ。
大作である為、今後は荒川区に相談して、何処かに寄贈する事も検討しているという。

そのままちゃんと邪魔な紐を押さえておけよ。

分かったからさっさと写真撮ってくださいよ。


さて、店内のあちこちには、手芸用品に混じって地球外生命体のミイラが並べられている。

つまり手芸=女性=母親=マミー=ミイラという事か。

なんですか、そのこじつけ感が凄い連想ゲームは。


ダンボールや木箱に入れられたミイラ標本。
これらは全て、店主の深沢さんが2003年頃から、粘土や針金などで手作りしたものだという。

飾ってるだけじゃなくて売ってんのかよ・・・。

5000円とかリアルな値段ですね・・・。


パッと見だと本当に何かの標本のようで、不気味なほど精巧な出来栄えである。


ただ残念ながら、手芸用品店にもかかわらず、肝心の女性客はあまり訪れなかったらしい。

地球の素材があまり売ってなさそうじゃしな。

そもそも怪しくて店に入りづらいですからね。


植物がベースのようなクリーチャー。
なんとなくバイオ怪獣のビオランテっぽい。


甲虫と表記されたクリーチャー。
どんな環境で生息していたかなど、それぞれ細かい設定が考えられて製作されているようだ。


こちらはサソリやクモを思わせるクリーチャー。
どちらが頭なのかは分からない。


この前日には、わざわざ静岡から来たまぼろし博覧会のセーラちゃんが、ミイラ標本を10個も買っていったという。

さすがに仕入れの時は女装してないようじゃな・・・。

余計な事を言わない方が良いですよ・・・。


ちなみにその後もミイラは追加購入され、 最終的にこんな感じの展示がなされた模様。さすがはニューカルチャーの聖地。


恐らく造形的に良い感じのものは、 前日セーラちゃんに買い占められてしまったと思われるが、 それでも依然としてエイリアン度が高いミイラ標本も複数残されていた。

遊星よりの物体X・・・いや、遊園寄りの物体Xって感じじゃな・・・。

こりゃもう人類がヤバいですね・・・。


中には化石っぽい作品もあった。


棚の下段には、何やら瓶がズラッと並んでいた。


もちろん、ここにも地球外生命体のミイラが収められている。

どうやら高麗人参ではなさそーじゃな。

確かに一見すると漢方薬っぽいですね。


場合によっては、もうほとんど無い事を覚悟して訪れたのだが、予想以上に瓶が大量に並んでいて驚いた。

ご主人E.T.作り過ぎいいい!

ゆうに100個以上はあるでしょうか・・・。


奥様曰く、これでもミイラはだいぶ売れたとの事だったので、在庫MAXの時は一体どんな陳列状況だったのだろうか。


大瓶の中には、爬虫類のような生命体のミイラが入れられていた。
外皮の粉っぽさや繊毛などの処理がリアル過ぎて、決して直接手で触れたくない気持ちにさせられる。


瓶にはラベルがつけられ、いくつかバージョンがあるものの、大体次のように書かれていた。


「西暦2365年 打ち上げられた惑星探査機が210万光年先の惑星MI―3で発見した初の有機生命体である。砂漠の岩山でミイラ化された状態であり、分子磁気波で地球に転送された。時空を捻じ曲げてのルートを使う事により210万光年を実に300時間で地球に転送することを可能とした。分子磁気再生によって復元されたものである。時空を超えた為に過去へ戻り、現在ここに保存されている。」


このようなSFな世界観の設定のもと、店主の深沢優典さんは何百もの地球外生命体のミイラ作品を手作りしたのである。

なるほど、さっぱり分からん。

アンドロメダ星雲から荒川区まで転送されてくる図がエモいですね。


小瓶の中にはヒューマノイドっぽいものもチラホラ。
こうして見ると、カプセルで冷凍睡眠中の宇宙移民のようだ。


訪れたこの日は閉店セール中につき、 作品はいずれも値札の半額か、奥様のさじ加減でさらに安く売っていただけるようであった。


店の奥には、地球外生命体の中で一番宇宙人っぽい立像が御神体の如く鎮座していた。


奥様はこれを「カッパ」と呼んでいたので、正確には地球上の未確認生物なのかもしれない。
もっともカッパ=グレイ(地球外知的生命体)という説もあり、いずれにせよ似たような超自然的な存在と言えるだろう。

ヅラをかぶったジジイみたいじゃな。

ものすっごいマヌケ面ですね。


見上げれば、飛行系UMAみたいな奴が身を乗り出しており、今にも襲い掛かってきそうな状態だった。


レジの上もご覧の有様。どう見ても怪奇の館である。

これは強い(確信)。

防犯対策としては良いかもですね・・・。


天井付近には、“厄払いのお面”が掲げられていた。
既にだいぶ売れてしまっていたようだが、以前はこれがもっと沢山あって、 通称「生首屋」と呼ばれるくらいだったそうだ。
それにしても、全て造形や配色が異なる手作りの一点物だというから凄い。


バシャバシャとスマホで撮影していると、奥様がこれまでの作品情報が記録されたファイルを見せてくださった。

なんか宇宙生物大図鑑って感じじゃな。

店内に並ぶミイラの数どころではない、大量の過去制作物があるようですね。


ご主人は車好きでもあり、以前は内装が全てウッド仕様の愛車を所有していたらしく、 奥様が店の奥からそのパーツの一部も持ってきてくださった。
お話を聞けば聞くほど、 想像力豊かで魅力的な方だったという事が伺え、ご健在の頃にお会い出来なかったのが残念で仕方ない。


この店は、「まちの駅」という地域交流を意図した休憩・案内所のひとつでもあり、「地球外生命体の駅」と名乗っていたそうだ。


1時間近く奥様と色々お話させて頂いたのだが、中でも以下のようなやりとりでのコメントが、 妙に面白いと同時に夫婦愛をも感じられて特に印象的だった。

しかしMIBにも摘発されずに、よくこれだけのミイラに囲まれながら今日まで営業を続けられたな。

奥様は大変ご理解がおありなんですね。
ご主人同様、宇宙人とかお好きなんですか?

奥様:いえ、私は正直気持ち悪いと思うし、よく分からないんですけどね・・・でも主人が作ったものだから、捨てたりは出来なくって。


宇宙と繋がっていた下町の手芸用品店。
通常営業は告知通り2018年3月いっぱいまでとなり、その後もしばらく商品整理などの為、 奥様は店を出入りされていたようだが、それも4月半ばで完了した模様だ。
建物自体は手放すものの、残った作品は今のところ処分するつもりは無いそうなので、 今後もまぼろし博覧会を始めとした様々な場所で、再びお目にかかれる機会があるかもしれない。
だが今はひとまず、長年お疲れ様でしたと言わせていただきたい。

我が軍で全て買い取りたいところじゃがな。

んな事したらミイラ取りがミイラになっちまいますヨ。


ささやかながら、こちらが今回の戦利品。
小瓶はそれぞれ通常600円のところ、セール価格の300円だった。
カッパや宇宙人みたいな厄払いのお面はオマケで頂いた。


比較的シンプルな造形でグロさもなく、場所も取らないので、インテリアにはちょうど良い品であった。

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