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[2017.10.17]

あやしい珍穴探検隊
~決死の洞窟潜入!富士山麓パワースポット巡りで生まれ変わる~



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日本のシンボル的存在の富士山は、古来より山そのものが御神体として崇められる霊峰であった。
その麓には、噴火により生じた溶岩洞窟が大小100以上も存在するが、 特に内部が人間の内臓に似た神秘的な空間は「御胎内(おたいない)」と呼ばれ、富士講の信者に重視される信仰の場となった。

という訳で今回は、日頃から富士信仰の研究を行う小嶋独観さんに、オススメの御胎内に連れてってもらいました。


近づくにつれ、徐々に厚い雲から頂上を覗かせてくれた富士山。
まるで我々を歓迎してくれているかのようであった・・・とでも書きたいところだが、恐らく気のせいだろう。

10月29日に小嶋独観×吉田悠軌トークイベント「奉納と供養のチョットだけ恐~いハナシ」やるから来てね!新刊の冊子も売るよ!

いきなり宣伝とかマジかよ師匠・・・!


印野の溶岩隧道・御胎内


まず訪れたのは、静岡県御殿場市の「御胎内清宏園」。
宝永4年(1707年)の富士山大噴火で埋まった溶岩地帯の上に造られた自然公園で、奥に天然記念物の溶岩隧道「御胎内」がある。
受付で入場料を支払い、安産夫婦岩を横目に散策路を進む。


途中の広場にあった溶岩石の展示。
その辺にも転がってるのに、わざわざ小屋に収納されていた。

なんともシュールな雰囲気じゃな・・・。

以前は鳥か何か飼育されてたのかな・・・。


溶岩が生み出した奇岩・溶岩樹型。
富士山の噴火により溶岩流が倒木を巻き込んで固化し、燃え尽きた樹幹が空洞になったもので、世界的に珍しい地学現象だという。

これから我々が入るのは、これのデッカイ版だよ。

何で最近そんなに穴にハマってるの?ねえ、何で?


しばらく森を進むと、御胎内神社に辿り着いた。
御胎内の溶岩樹型の構造が、母胎の臓器にも似ている事から、古くから安産の守り神として信仰されているパワースポットの様だ。


この神社のすぐ傍に、御胎内の入口がある。
江戸時代の富士講の人達は、富士山に登拝する前日にまずここで「胎内巡り」を行って身を清め、“生まれ変わり”を体験するのが決まりだったそうだ。
俗界にいる人間が神聖な富士山頂に行きつくには、登る前から色々と大変だったらしい。

ここで引き返せば、爽やかな森林浴で終われるのにな・・・。

何を甘っちょろい事を。修行しろ修行!


そもそもここは、空海が弘仁年中(810~824年)に開いた神仏並祀の社だったそうで、 修験者達が修業を行った歴史ある場所らしいが、おみくじは意外と今風の自販機が設置されていた。


こちらは神社の近くにあった妙に巨大な灯篭。


よく見ると木陰から我々を見守っていたお地蔵様。

ところで、何故こんな周囲をやたら撮影したかと言うと、 入洞にあたり、他の皆が汚れ対策のレインパンツを履くのを待っていたからだ。
そして、その辺の装備を大魔王1人だけ忘れてきたからである。

そのままだとジーンズとかドロドロになるよ?
生まれ変わるというか死ぬよ?

ぐぬぬ・・・!
廃墟巡りで鍛えた動きで、一切汚れずに脱出してみせるぞい・・・!


御胎内の内部はこんな感じ。
全長68mの洞窟はクセが強い「R」みたいな形状になっており、人体の内部になぞらえた名称が所々に付けられている。
父の胎内から始まり、母の胎内を通じて出るという具合で、言わば出生の旅路を疑似体験出来るようだ。


階段を降りて御胎内の入口を覗くと、 昨日までの雨の影響により、明らかに地面がグチャグチャな雰囲気で、軽く絶望する。

・・・くっ、殺せ!

魔物の巣穴じゃないんだから。


やる気満々の独観隊長を先頭に、いざ内部へ。
「珍寺大道場」洞窟修行編といった感じである。

穢れを落して生まれ変わろうぜ!バモス!

誰かと微妙にキャラが被ってるよーな。


まずは序盤の「小腸部」~「大腸部」と名付けられたルートを屈みながら進んでいく。
低い天井からは水が滴り落ち、地面は案の定グチャグチャだった。

これは両手が空くヘッドライトを持ってきて正解だったな・・・。

お子ちゃま向けのレジャーかと思って正直ナメまくってたぞい・・・。


やがて少しだけ空間が開けた「五臓部」に差し掛かる。
ジーンズが汚れるから膝を一切付けられないハードモードである為、早々に雰囲気のある画を諦め、ストロボ撮影メインに切り替えた。


本来であれば気になる「乳房石」も、じっくり撮影する余裕は無い。

(隊長独白) 一番体積が大きい私が率先して活路を見出せば、後をついてくる隊員達も洞内を問題なく通れるはずだ・・・ 若い隊員達の判断力や精神力に期待するのは酷だ・・・経験豊富なこの私がしっかり導いてやらなければ・・・!

あー、独観師匠のケツばかり写真に写るなー。


ちょうど中間地点まで来ると、さり気なく本殿があった。
一応それっぽく置かれた感じの石祠の屋根がそそるが、やはりあまり眺めている余裕は無い。


と、その時!先行く独観隊長(お尻)が叫んだ!

ええーッ!?

不安になるから、そんなマスオさんみたいな声出すのやめて。


ギャガ━━ン!

とても天井の低い難所「子返り」である!
思っていたより険しいルートに、動揺する我々探検隊!

受付のおばちゃん、地面に膝つける場所はせいぜいラストの一ヶ所くらいとか言ってたのに・・・。

ニコニコ顔で「全然楽勝よ私も毎朝通ってるわよ」くらいの感じだったのに・・・。


もはや後には引けない為、準備を整え、意を決して進む。
まさに胎児の様に身を小さく縮めながら、頑張って通り抜ける事となった。

念の為カメラのレンズにキャップしとこう・・・。

くっそ、もう汚れるしかねえのか・・・。


※通り抜ける際の写真は撮れなかったので、奮闘中の様子は各自ご想像にお任せします。

(ゴリゴリゴリ)うわあああロドリゲスゥゥゥ!!?(※カメラの名前)

なんじゃこりゃああああ!!?


どうにか難所を越えた先にあった後半の見所「母の肋骨」。
黒光りする独特な形状の壁面が面白い。
しかし皆、息を切らしていてあまり眺める余裕はなかった。

見てこれ、造形デザインがギーガーっぽいでしょ?
『エイリアン:コヴェナント』観た?

いやもう、ギーガーとか、今どうでもいいから・・・!


肋骨のすぐ近くにあった「安産石」。
女性が触ると子宝に恵まれたり、安産祈願になるとされる重要な場所であるが・・・。

いや、どれが安産石だよ?

君が撫でても仕方ないだろ。


ギャガ━━ン!

そして、最後の難関である「産口」が我々の前に現れた!
探検隊一同、再び受付のおばちゃんの「全然楽勝よ」みたいな笑顔が頭をよぎるが、見た感じ明らかに四つん這いでないと通行不可な場所である。

おいおいホセ、こんなとこ本当に通れるのかよ!?
もし1人で来てハマったら遭難しそうじゃぞ!

落ち着け!あとフィリピンパブの俺のあだ名で呼ぶな!


ファイト一発、奇声とともに這い出る独観隊長。

産まれたあああ!!!

朝4時起きなのに何でそんなに元気なの?

後に続く者達も、「バブー」とか言いながらハイハイしていった。
恐らくクライマーズ・ハイの様なテンションになっていたと思われる。


入口のすぐ横にある御胎内の出口。
予想以上にハードな道のりであったが、我々はなんとか無事生まれ変わる事に成功したのだった。

巧みな身のこなしにより、どうにか汚れずに済んだ。さすがワシじゃ。

いや、少しくらい汚れろよ・・・。

せっかくなので、隊長視点の記事も併せてご覧ください。


船津胎内樹型


続いてやって来たのは、 山梨県の富士河口湖町にある「河口湖フィールドセンター」という自然体験施設だ。
ここにもやはり、「船津胎内樹型」という天然記念物の溶岩洞窟があるのだ。そう、まさかの洞窟のハシゴである。

ここ、ここ!
この前も来たんだけど、雰囲気の良いオススメの樹型があるんだよ!

そんな小洒落たカフェみたいなノリで洞窟を勧められても・・・。


胎内樹型の入口である無戸室浅間神社。
ここは1000年程前の富士山大噴火で流れた溶岩が固まった場所で、 340年程前の江戸時代に富士講の信者によって洞穴が発見され、明治時代に社殿が建てられたという。


ちなみに、 「無戸室浅間神社」の“無戸室(ウツムロ)”は、富士山の女神である「木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)」が、古事記に記載されている “戸の無い産屋”で3人の神の子を産み落としたという伝説に由来しているそうだ。


賽銭箱の向こう側にポッカリと空いた穴が、全長約68mの溶岩洞窟の入口となっている。
樹型の中でも代表的であり、複数の大木が折り重なって出来た稀有な自然の造形物である同地は、 2013年6月に信仰の対象としての価値から、世界文化遺産「富士山」の構成資産として登録された。


隠しダンジョンっぽい感じにテンションが上がりつつ、いざ内部へ。
事前に受付で参拝料を支払ったが、こちらでも改めてお賽銭を捧げ旅の無事を祈願した。

よっしゃ、入ろうとしてる感じのカットをもう何パターンか撮ってちょ!

秘密基地みたいで面白いっしょ。


一歩入ると、洞窟内はライトが不要なくらい明るく、やはり体内を想起させる肋骨状の天井も、中腰でOKな高さだった。
どうやら先程の御胎内に比べると、難易度は低いようだ。

来る順番を間違えたのでは?

移動の効率を考えたら仕方ねーだろ。


正面の突き当たりに安置された金属製の幣束。
独観さんのケツばかり写る」と愚痴をこぼしていたら、今回は先頭を歩かせて頂けた。優しい親心に痛み入る思いである。


入口付近の空間から岩を下っていくと、道が二手に分かれた分岐地点だった。 左には「母乃胎内」と記された細い脇道がある。

ちなみに右に行けば本道の「父乃胎内」だよ。

男か女だったら、ワシは女を選びたい(真顔)。


ギャガ━━ン!

だがこちらは、 低い天井が20m程続く一番の難所である。

やっぱ行くの辞めようかな。

はよ行きなさい。


閉塞感が凄いトンネルを、息を切らしながらしゃがみ歩きで進む。
しかも、先に行けば行く程狭まってくるのでスムーズに移動できず、たかだか20mとは思えない長さが感じられ、 翌日以降の筋肉痛が察せられる地味な辛さであった。

どうだい?なかなかいい樹型でしょ?

脱獄中の囚人にでもなった気分っす。


ようやく最深部まで辿り着くと、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)が祀られていた。
ちなみにこの神様、全国に1300社ある浅間神社の総本宮で、富士山頂に奥宮がある浅間大社の「浅間大神」とも同一視される。
神である富士の裾野に点在するこれらの洞窟は、言わばその巨体の一部という事になるのだろうか。


久しぶりに普通に立てるくらい天井の高い空間で、 どうやらかつての木の根に当たる場所らしい。まさに母之胎内(子宮)である。

・・・え?これだけ?

さて、じゃあ折り返すぞ。


そそくさと元来た道を戻り、今度は15m程の本道に当たる「父乃胎内」の方へ。
ちなみに他の隊員達は脇道をスルーし、直接出口の方へ向かったらしい。


真っ直ぐ進むと、日本神話に登場する神・邇々芸命(ニニギノミコト)が祀られていた。
天照大御神(アマテラス)の孫にあたり、木之花咲耶姫の夫である。故にパパ的なポジションとなっている模様。


ここから少し進むと出口が見えた。
外からの日差しが、奇妙にうねった側壁や天井を照らし、 改めてエイリアンの世界にでも迷い込んだような感覚に陥った。


そんなこんなで、無事に出産完了。
我々は新しい自分になったかのような、清々しい気持ちで外界の空気を吸った。

いやあ、1日に2回も生まれ変わってしまった。

これ生まれ変わって更に生まれ変わったら、結局元に戻らない?



オマケ

富士信仰を学べる「ふじさんミュージアム」にあったミニ富士塚。


もちろん登頂する独観さん。
このお方、各地の富士塚を次々攻めるなど、富士信仰絡みのフィールドワークに並々ならぬ熱意を見せるが、 肝心の富士山自体には登った事がないそうだ。

ぶわはははは!外堀を埋めて本丸に乗り込まないタイプだ!

うるせえよッ!

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