アメリカのミシガン州には、上部半島と下部半島を彷徨い歩く犬(あるいは狼)型の獣人「ドッグマン」が存在するという都市伝説があるらしいんですね。この噂の発端は、1987年4月1日に同州トラヴァースシティーにあるラジオ放送WTCMのアナウンサーであったスティーヴ・クック氏が、エイプリルフールのジョーク企画として、彼自身によって作詞された『The Legend(伝説)』という歌を流した事によるんですよ。
この『The Legend』の詩は、ミシガンにおけるドッグマンなる化け物の存在について表現したものでしてね、1880年代から1980年代までの毎10年間の7年目に生じる、人々とその化け物との遭遇について綴られていたんですよ。しかし、実際のところクック氏はこんな化け物の伝説を聞いた事は無く、内容は彼によって作られた全くのフィクションだった。こうした謎の生物をテーマとした歌詞になったのは、単に作者のクック氏がもともと、若い頃から心霊やUMA等の民俗学的なものに入れ込んでいて、話題になったビッグフットやジャージー・デビル等から着想を得たからだそうです。また、毎10年間の7年目にドッグマンが現れると言うのは、自然界のものは全て周期的であり、鳥の移住やイナゴやセミの大量発生が大体7年周期であった事から取ったものらしいです。そんな訳で、放送日のほんの数日前に、クック氏の同僚ジャック・オマレイ氏が歌声を吹き込んで、大人の遊び心が溢れたテープが完成し、4月1日の午前7時40分と午後9時10分の2度に渡って、この『The Legend』はラジオで流されたんですね。 ドッグマンは人々の恐怖が具現化したモンスターなのか?▲ しかし、放送直後はリスナーからの反応は全く無く、このジョーク企画は失敗だったと制作側も思ったそうです。ところが、しばらくしてから電話が鳴り出し、ラジオで流れた不思議な歌についての問い合わせが寄せられた。その問い合わせの中で、ある初老の人が、歌に出てきた様な化け物と数年前に実際に遭遇した事があり、歌を聴いて驚いたという旨を主張したそうなんですよ。これを引き金として、以後数週間に渡って、クック氏が歌で作ったドッグマンの様な化け物を目撃したという、説得力のある報告が複数寄せられる事になり、同時に『The Legend』はリリース後、地元で非常にポピュラーなものとなった。そして、同年7月、同州のルーサーという湖に近い村の近くにある丸太小屋が、何かの動物に襲撃されると言う事件が起こった。調査にやってきた郡保安部員と森林警備隊員は、小屋のドアや窓の周囲が、生々しい歯型や爪痕で深く傷つけられ、網戸も引き裂かれており、更に地面には明らかに大きな犬の様な生物の足跡が残されているのを発見したそうです。彼らはWTCMに連絡し、この状況がまるで『The Legend』で毎10年間の7年目の事として予言されていたかの様であった為、どれくらい適合しているだろうかと、ジョークを言ったそうなんですね。
その後この事件とドッグマンについての因果関係はニュースでも取り上げられ、すぐに全国的に知られるまでに広がり、『The Legend』は完全にヒットソングとなり、国中のラジオ局からコピーが求められ、大手レコード会社からもお呼びがかかり、遠く離れた日本やドイツからもテープの販売のリクエストが寄せられる程だったみたいなんですね。そして、『The Legend』のテープは量産されまくり、3ドルという価格で販売されるや売り切れが続出したそうで、その売り上げはチャリティーに寄付されたらしいです。また、この歌には全部で5つのバージョンがあり、オリジナルの1987年バージョンに、改良を加えられた夏バージョン、続編のシグマ物語バージョン、10周年記念の97年バージョンと来て、2007年には20周年記念で伝説の完結となる最終バージョンがリリースされているそうですよ。
なお、このドッグマンを思わせる生物の遭遇事例は現在においてもそこそこある様でして、例えば、ウィスコンシン州南部のワシントン郡を中心に出没するベアウルフや、シカゴ郊外にある田舎道ブライ・ロード周辺で目撃される狼男が、同様の存在ではないかとも思われるんですね。・・・今なお語り継がれる獣人伝説。 人々の恐怖と信じる心が、嘘を本当にしたのかもしれないですね。
■関連記事 ・アイオワの田舎町を恐怖に陥れた怪物ヴァンメーター・ビジター ・都市伝説のUMAブタ男の謎が解明か? ・トカゲ男がリア充カップルの車を破壊 ・バニー・マンの都市伝説