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[2004.01.13]

FILE043:ベルメスの顔


1971年8月23日の蒸し暑い朝、スペイン南部アンダルシア地方のシェラマヒナ山中にあるベルメス・デ・ラ・モラレダという小さな村に、オリーブを栽培し、山羊を飼って細々と暮らしていたフワン・ペレイラ一家に、異変が起こったんですねぇ。
この家の奥さんであるマリーアが、いつものように朝食の支度をしようと台所に入ったところ、台所のタイルの床に見知らぬ男の顔のようなものがくっきりと浮かんでいたんですよ。
それは等身大の男の顔で、目も鼻も口も髪の毛もはっきりした灰色の線でくっきりと描き出されているんですよ。マリーアは恐ろしくなって、すぐに夫を呼んだんだ。
彼女のただならない声に、駆けつけたフワンも怪訝そうな声をあげた。
子どもの悪戯だと思うには、こんなにうまく絵を描ける者は家にはいないはず。
彼らは誰かがふざけて描いたんだろうと、雑巾でごしごしと床をこすったんだ。
しかし、どんなにこすっても、その顔は消えないんだなぁ。
こすればこする程、顔の表情は悲しげになり、彼らを怯えさせたんですね。
この顔は、床の表面に描かれているのではなく、コンクリートそのものの模様だったんだ。
彼らは、これは悪魔が描いた絵かもしれないと思い、必死に神に祈ったんですけどね、床の絵は消えない。
恐ろしくなったフワンは、顔の浮かんだタイルを切り取って、セメントを流し込みコンクリートに取り替えました。
フ、何を語るかと思えばそんな話か!
いいか淳二郎、人間という動物はな、ちょっとした染みや汚れでも、顔のように脳が認識してしまうんだよ!
思い出してみろ、うちの実家の押し入れの中にも、パパイヤ鈴木みたいな顔の染みがあったじゃないか。この事件もそれで説明がつく。
恐らくこれは、湿度の変化かなんかの環境要因によって、物質が突然変異したのだよ。
ところがですね、3週間たつと、前の顔と同じところに同じような顔が再び浮かび上がってきたんですよ。しかも、前よりも目鼻立ちがさらにはっきりしていたんです、ええ。
その上、日によって顔の表情が変化してるように見えたんですねぇ。
事件は口々に広まって大騒ぎになり、11月2日に村長の提案で、つめかけた村人たちの前で、顔の部分のコンクリートが注意深く切り取られ、部屋の壁にかけられ、その下に花を供えて、懇ろに供養されたんですよ。
この騒ぎに黙っているわけにはいかなくなった地方当局は、顔が浮き上がった部分の本格的な調査を開始したんですね。
早速、2mほど床下の土を掘ってみたところ、なんとたくさんの人骨が見つかったんですよ。
そして、古い資料を調べてみると、この家は17世紀のフェリペ4世時代の墓地の上に建てられている事がわかったんだなぁ。
なんですとー!?
って事は、浮かび上がった顔は、その墓地に葬られた死者のモノって事になりますね・・・!
ぐ、偶然だよ、偶然!あの地方ではよくある事だ・・・。
そして、顔を切り取った後も異変はまだ続いたんですね。
掘った穴を埋め、セメントで塗り固めた3ヶ月後に、別の顔が浮かび上がったんですよ。
その2週間後には、女性らしい顔も現れた。
それから間もなくして、今度は小さな様々な顔が大きな顔を囲むようにして、次々と浮かび上がってきちゃったんだ。なんと18個も。
1972年4月9日には、調査を依頼されたアルグモサ博士の目の前で、いくつもの顔が一斉に床の上に浮かび上がったそうなんですね。
最初はぼんやりとした輪郭が現れて、それが徐々に人の顔になったのです。
さらにお次は、人の声が聞こえ始めるようになった。
調査官が超高感度のマイクを設置すると、人の耳には聞き取れない苦しげなうめき声や泣き声や、どこの言葉かわからないような言語がキャッチされたんですよ、ええ。
ペレイラ夫婦も、ここまできてはさすがに我慢が出来なくなり、台所を完全に改装しちゃったんだ。
その後、顔は1974年頃からだんだん現れなくなったんですけどね、1982年からまたも現れ始めたんですよ。
結局、アンチ・オカルトな学者達でさえ、この浮かび上がった顔を科学的に説明することは出来なかったんだなぁ。
ワシの仮説によれば、このベルリンの壁の正体は、恐らく妖怪ぬりかべじゃと思・・
実は今日、その床に浮き上がった顔の写真を持ってきているんですよ。
や、やめないか淳二郎!
誰もそんなくだらない写真なんか見たくないんだよ!な、なあ諸君!
見たい。
ひょっとして兄さん、怖いのかい?
ば、バカを言いなさい!
12歳でヒトゲノムの解析を完了させたこの私が、そのような非科学的な事象で恐怖心など抱くはずがあるまい!
私はただ、しょうもない写真を見て、皆の貴重な時間を無駄にするのが忍びないだけだ!け、けして怖いわけでは、な、ナッシング!
この写真は、これまで数々の怪奇現場へ出向いた勇気あるプロの私でさえ、おもわず3分待たずにカップラーメンを食べてしまう程、おぞましいものです・・・ええ。
そんなにおぞましいんですか?
ええ、それはもう、ボットン便所の中をついつい覗いてしまった時くらいのレベルです。
やっぱ見たくねぇーっ!!
この悲しみと苦痛に満ちた表情を見た瞬間、あなたの全身に戦慄が駆けめぐることでしょう。




では、とくとご覧下さい 。







うーわァァァァァァーッ!!
ち、地球外!地球外知的生命体ッ!
もちつけ、かまいたちッ!いや、落ち着け、お前達ッ!
パニックを起こすな!こーゆう時こそ冷静に行動するんだ!
落ち着けぇーーーっ!!!
お前が落ち着けっ!
な・・・なんてこった!!
ゴンザレス谷村の姉の旦那さんの中学時代のマドンナのマチコ先生にメロメロだった川畑くんの義理のお父さんの友人であるドミニカに移住した小堺さんにそっくりじゃないか・・・!
あー、そーいえば似てますねぇ!
知ってるん!!?
Back number
FILE137:
死神ベンツ
FILE136:
謎の少年カスパール・ハウザー
FILE135:
オルメカの巨石人頭像
FILE134:
エゼキエルの幻視
FILE133:
地獄の声が聞こえる穴
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