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[2020.05.24]

四谷シモン人形館 淡翁荘
~異界の住人が佇む幻想ドールハウス~



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昭和風情が漂うレトロな洋館に、妖しい人形が何体も佇む光景は、まるで幻想小説の世界に迷い込んだかのよう――。
そんな白昼夢にも似た感覚が味わえるのが、香川県坂出市の「四谷シモン人形館」である。




ここは、鎌田醤油(※1)の敷地内にある歴史的建物「淡翁荘」(※2)を利用し、人形作家・四谷シモン氏の作品が展示されている施設。

※1:老舗の醤油メーカー。醤油の他、地元・香川の名物である讃岐うどんのつゆも手掛ける。
本社の敷地には人形館の他、醤油直売所や郷土博物館、庭園などもあり、“鎌田ミュージアム”の総称で運営されている。

※2:淡翁荘 (たんおうそう)は、1936(昭和11)年に迎賓館として建築されたRC造の洋館。
鎌田醤油の経営者にして政治家・鎌田勝太郎(淡翁)の居宅でもあり、1階は和室中心、2階は洋室中心となっている。 2004年からは「四谷シモン人形館」として人形作品の展示を開始。
2014年12月には登録有形文化財となった。


和洋折衷の館内には、格式高い調度品に混じって、23体の球体関節人形が“住んで”おり、探索型インスタレーションとなっている。


まず玄関では、顔色が悪い礼装の紳士と、ケースに収まる露出狂男に出迎えられ、靴を脱ぎつつ大いに目を奪われる。




入口でいきなりインパクトを放つこれらの人形。
クラシックな装いの紳士は『ルネ・マグリットの男』という作品で、1970年に大阪万博の繊維館でも展示されたもの。
パズル状の体をした全裸のヒゲは『ピグマリオニスム・ナルシシズム』という作品で、作者の四谷シモン氏自身に似せて制作されたらしい。






そして広間には、正統派な美少女・美少年の他・・・




シャツを肌蹴たセクシーな紳士(胸像)、 マッチョな全裸男2人が阿吽の如く左右に並び、ナルシシズム溢れる独特な異空間を形成している。




通路の襖やトイレの扉を開けると、アンドロイドの素体っぽい存在が不気味に待ち構え・・・






階段上や金庫の中には天使(※4)が軽やかに舞い・・・

※4:階段の踊り場上の天使は『天使-澁澤龍彦に捧ぐ』という作品で、四谷シモン氏が敬愛し交流のあった作家・澁澤龍彦をモチーフとしたものらしい。






書斎風の小部屋の押入れには愛玩系の少女が寝転ぶ。


戸棚の中には小さな人形も隠され、軽い宝探しのようでもある。








これら異形の像(ひとがた)達は、最初から棲家として決まっていたかのように、昭和初期のモダン建築と絶妙にマッチしている(※5)。
“暗黒のメルヘン”的な、危うい美しさが魅力のドールハウスなのだ。

※5:人形設置のきっかけは、2001~2003年に四国で行われた個展の展示作品の収容場所として、この洋館が選ばれた事によるという。


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